アフリカメダカはアフリカのモザンビーク等に棲息する年魚と言われる種類の小型魚類です。この小型魚類は脊椎動物で最もあるいは2番目に短命だと言われています。3~5ヶ月で短い一生を終えるサイクルは内因的なものであり、野生のみならず実験室内でも再現されます。さらにわずか1~2ヶ月で臓器の萎縮、運動能力の低下、癌の発生頻度の上昇など、老化の様々な兆候を示します。もちろん小型魚類一般のモデル動物としての利点は同様に有しており、老化やそれに伴う疾患の新しいモデルとなると期待されます。 本研究申請ではアフリカメダカを神経疾患のモデル動物として樹立することを目的としました。研究期間内に申請者らはこの超短命の脊椎動物であるアフリカメダカにおいて加齢以外なんら特別な処置なしに、ヒトパーキンソン病に酷似した病変が進んでいくことを見いだしました。すなわちアフリカメダカは加齢依存性にドパミン・ノルアドレナリン神経の変性を示し、αシヌクレイン陽性の凝集体病変は脳幹脊髄あるいは腸管自律神経から全中枢神経へ連続的に進展を見せました。これはまさにヒトパーキンソン病病理に瓜二つと言えます。このような所見は外観の類似した他種の小型魚類であるメダカやゼブラフィッシュでは全く観察されません。これらの結果から老化がパーキンソン病の発症に強く関わっていることが示唆されます。この自然発生のヒト疾患モデルは大変貴重であり、今後さらに詳細な解析を続けていきます。
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