研究課題/領域番号 |
26640064
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
川原 敦雄 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10362518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム編集技術 / 遺伝子破壊 / 遺伝子置換 / CRISPR/Cas9 / 発生工学解析技術 / モデル生物 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでに新規のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いゼブラフィッシュにおける効率的なゲノム改変技術の開発に国内で最初に成功していた。本研究では、CRISPR/Cas9システムを基盤とした次世代型の遺伝子置換法(ノックイン法)を開発することを目指した。当初の実験計画では、Cas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統を基盤としたノックイン法を開発することになっていたが、樹立したGAL4-UASシステムでCas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統は、ゲノム改変に十分なゲノム編集活性が認められないことが判明し、その問題点を克服しなければならない状況となった。我々は、これまでのゲノム編集の技術開発の過程で、標的ゲノム切断部位において短い相同配列を利用したマイクロホモロジー修復が機能していることを見出していた。そこで、CRISPR/Cas9切断部位に標的ゲノム部位と相同な配列(20-40塩基)を組み込んだ新たなベクターシステムを開発した。このシステムが効率的なノックイン法として機能するかを色素合成に関与するチロシネース遺伝子と表皮細胞に高い発現を示すケラチン遺伝子の遺伝子座に蛍光タンパク質が遺伝子置換しうるかを指標に解析を行った。その結果、2つの標的ゲノム部位に高い効率で精巧に遺伝子置換されること、また、この遺伝子置換は、上記の相同配列に依存した現象であることを発見した。さらに、F0胚で確認された精巧な遺伝子置換は、次の世代であるF1胚に生殖系列を介し移行できうることが確認でき、新規の発生工学技術が確立できたことが証明された。これらの研究成果は、オープンジャーナルであるScientific Reportsに発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画に従いCas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統を作製し、そのゲノム編集活性を測定したが、遺伝子置換を行うには十分な活性ではないことが明らかとなった。そこで、この問題点を克服するために、新しいベクターシステムを構築し、マイクロホモロジー修復機構を利用した全く新しい発生工学技術を開発した。本研究で開発した手法は、遺伝子置換に利用する相同配列が20-40塩基と非常に短くベクターの構築が極めて簡便である。また、遺伝子置換の効率は、蛍光タンパク質の発現で推測することが可能で、これまでの手法と比較して高い確率でノックイン系統を作製できる。この新規ゲノム編集技術は、受精卵が入手できるあらゆるモデル生物に広く応用可能な大変汎用性のある発生工学技術である。さらに、この手法の開発過程で、ノックイン法を用いた効率的で簡便な新しいゲノム改変生物の作製法へと改良を進めており、その研究成果を学術論文としてまとめている段階であるので、予想以上の研究成果が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、本研究により効率的な遺伝子置換法(ノックイン法)の開発に成功した。今後の研究の方向性としては、我々が開発したノックイン法を基盤とした簡便で効率的な遺伝子破壊ゼブラフィッシュ系統の作製技術の開発を行う。これまでの逆遺伝学的な解析手法は、標的遺伝子内で生じたゲノム改変をシークエンス解析により調べる必要があり、より簡便な解析手法の開発が望まれていた。研究代表者は、本研究で開発したノックイン法を改良し、さらに、標的遺伝子のプロモーター活性を利用することにより、蛍光タンパク質の発現でゲノム挿入を可視化できる新しい解析システムを構築する。予備的知見として、ゲノム挿入に依存した蛍光タンパク質の発現による可視化に成功しているので、その研究成果を論文として発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に従い物品の購入などを行い、助成金の大半を使用したが、残額が1062円であった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記で生じた次年度使用額は、物品購入費として使用する計画である。
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