研究課題/領域番号 |
26640065
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター) |
研究代表者 |
郷 康広 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター), 新分野創成センター, 特任准教授 (50377123)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 疾患モデル / 霊長類モデル / ゲノム |
研究実績の概要 |
ヒトの精神・神経疾患の理解には、ヒトに近縁かつ実験が可能なモデル動物の開発が必要不可欠である。そのモデルとなりうるのが小型霊長類のマーモセットである。本研究では、げっ歯類では代替不可能なヒト精神・神経疾患や高次認知機能解明のモデルとしてのマーモセットに注目し、モデル動物開発の端緒として、マーモセット200個体を対象とした精神・神経疾患関連遺伝子3,323個の全遺伝子配列決定によるパーソナルゲノム解析および機能喪失型変異を有する個体における遺伝子発現解析による自然発症ノックアウトマーモセットの同定を行ない、ヒトの疾病モデルと資する個体あるいは家系の同定を行うことを目的とする。 平成26年度中に、5施設からマーモセットの血液試料の提供を受け、合計234個体分のDNAおよびRNAの調整を行った。その中から82個体に関して、ヒト精神・神経疾患関連遺伝子と相同遺伝子の次世代シーケンサーによる配列解析を行い、精神・神経疾患関連遺伝子に自然発症的な遺伝子機能喪失型変異[LoF(Loss-of-Function)変異]を有する個体および家系の同定を試みた。 イルミナ社のHiSeq1500型シーケンサーによりライブラリーの両末端100塩基の配列を決定した。個体あたりの平均リード数は1220万リード、ターゲット領域(精神・神経疾患関連3,323遺伝子)の平均カバー率は52.6×のデータを取得した。それらのデータをもとに詳細な解析を行った結果、ヒト精神・神経疾患(11疾患)のうちで特に関連性の高い545遺伝子を対象とした場合、10遺伝子においてマーモセット内において稀な(頻度10%以下)LoF変異を保有する個体がいることを明らかにした。そのうち2個の遺伝子においては、LoF変異をホモで保有する個体が存在し、また、多数のヘテロ個体が存在することも明らかした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで多施設との共同研究により、当初予定していたサンプル数(200個体)を超えるDNA/RNA試料をすでに確保できており、今後、さらにこの数は増加する予定である(最終的には400個体程度を予定している)。DNA/RNAの純度のチェックから、ライブラリー調整、次世代シーケンサーによる配列解析を行うまでには、時間を要するが、サンプリング(234個体)および配列解析(82個体)をすでに終えており、またすでに新たな96個体分の配列解析を現在行っているところである。また、すべてのサンプルに関して末梢血由来のRNAも取得しているため、遺伝子機能喪失型変異を有する個体の遺伝子発現を調べることも可能な状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点で保有しているサンプル数をさらに増加させて400個体の試料収集を多施設との協力関係のもとでより一層推進する。また、現在解析中の96個体分のデータと合わせて当初予定していた200個体を超える350個体程度の解析データの取得、変異個体・家系の同定を行う。 得られた結果から、LoFホモ変異個体の表現型解析、およびヘテロ個体のin vivo, in vitroでのペアリングを介したホモ化に向けた基礎データの収集を行う。また、LoFホモ/ヘテロ個体の遺伝子発現解析も行い、霊長類疾患モデルとしての総合的な考察を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品(試薬:553,881円)の発注は1月に行ったが、海外による受注生産品であり、試薬の納品は3月30日にあったものの、実際の支払は4月になってしまったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
すでに全額の支払を終わっている。
|