研究課題
大部分のがん細胞では染色体数の異常(異数性)が認められ、この背景には細胞分裂時の染色体分配の異常(染色体不安定性)が存在する。しかし染色体分配に明らかな異常があるとそもそも細胞が生存することができないため、染色体不安定性の本態については不明な点が多い。本研究では、正常細胞や染色体不安定性を示すがん細胞において、特定の染色体を蛍光ラベルしてそれが分配される過程を追跡することにより、どのような要因で染色体分配の異常が起こるのかを特定する。また染色体の不均等分配を起こした細胞のそれ以降の挙動を追うことにより、染色体不安定性が成立する過程を解析する。平成26年度には1番染色体を可視化したU2OS 2-6-3細胞を樹立し、染色体分配の過程における1番染色体の挙動を追跡した。平成27年度には、単一染色体のライブ観察のための新たな手法の開発を行った。まずかずさDNA研究所より分与されたヒト人工染色体を導入したHeLa細胞で、人工染色体を可視化してその分裂期における動態を観察した。またPA-GFP-tubulinを発現するHeLa細胞で、他の染色体より整列が遅れた染色体をレーザーにより可視化し、その後の挙動を観察することに成功した。一方染色体不安定性の分子基盤として染色体動態に着目し、2つのモーター分子CENP-EとKidが共同して染色体整列に関与することを明らかにした(Nat Commun, 2015)。Kidの発現を抑制した細胞では染色体分配異常の頻度が上昇しており、染色体不安定性がひきおこされていることがわかった。これらの結果より、単一染色体を可視化してライブ観察する手法の開発に成功した。今後これらの手法を染色体不安定性の原因の解明に活用する予定である。また染色体不安定性の分子基盤の1つとして、染色体動態の異常を見いだした。今後そのほかの要因についても検討し、がんでの染色体不安定性の原因の解明につなげたい。
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