研究課題/領域番号 |
26640068
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田中 正光 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20291396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞間接触 / デスタッチ / アポトーシス / 癌間質細胞 |
研究実績の概要 |
癌細胞と間質細胞の接触に基づく癌細胞死の誘導機構について解析を進めた。 スキルス胃癌細胞株と胃癌組織由来の癌関連線維芽細胞を用いて、両者の接触による癌細胞死の誘導を観察した。両者の共培養を評価したところ、細胞死は癌細胞側に誘導されるが線維芽細胞にはほとんど生じない事、両者の直接接触により癌細胞死は高頻度に見られ、それはcsapase-8の活性化依存性である事などを見出した。さらにこれまでに用いてきた3次元ゲル浸潤アッセイと組み合わせて、癌細胞と線維芽細胞の共役的な浸潤に対する影響を検討した。このゲル浸潤アッセイでは、癌細胞主体の細胞結節による圧排性の浸潤様式と、線維芽細胞がリードする癌・間質細胞の共役的な浸潤様式が観察される。caspaseを阻害する薬剤処理では、予想どうりに癌細胞のアポトーシスは抑制され、癌細胞の増殖が促進される結果、圧排性の浸潤様式が主体となった。その一方で癌・間質細胞の共役的な浸潤様式はむしろ抑制される傾向にあった。当初、間質細胞による癌細胞死の誘導はがんの排除機構であると考察していたが、適度な癌細胞死が生じる事は間質細胞を含めた腫瘍の浸潤様式を左右する因子となっている事が示唆された。 癌細胞にアポトーシスを誘導する受容体を同定し、そのノックダウンとcaspase-8の活性化をブロックする蛋白質断片の発現誘導により、癌細胞死を阻害した場合の腫瘍の浸潤形態をゲル浸潤アッセイとマウス移植腫瘍で評価し、上記仮説を支持する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間質細胞による胃癌細胞のアポトーシス誘導機構の証明と、その主経路をほぼ予定したタイムスケジュールで特定できた。 また、この間質細胞による癌細胞死の誘導は、当初予測していたような癌を排除するためだけの機構ではなく、その程度は癌組織の浸潤様式を変換させ、場合によってはむしろ浸潤を促進する側面を有する可能性が得られた事で、より広範囲にこの現象の腫瘍生物学における効果を検討する具体的な視点が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞死が腫瘍組織に多面的な影響を与える事が示唆されたため、その腫瘍抑制的な側面と浸潤様式の変化による腫瘍促進的な側面が、どのような分子発現の程度により区分されるのかを検討してゆく。 実際の腫瘍組織における癌細胞死の同定と受容体の発現程度の相関性、またその腫瘍間質細胞におけるリガンド分子の発現を合わせて検討し、これらのマーカー分子の発現量から腫瘍の浸潤促進に向かうのか、抑制性であるかを予測可能か検討する。これまでに得られた結果は論文化中にあり、完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
候補分子の解析に購入がまだ必要な抗体や試薬、および最終年度における論文投稿料などに経費の不足が予想されたため、繰り越し分で確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
同定した癌細胞死に関する分子群の機能の検討と臨床検体での解析を進め、論文としてアクセプトまで完成させる。
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