研究実績の概要 |
血管内皮細胞が VEGF 刺激を受けて早期活性化する仕組みを解明するため、時間分解能を上げた0,15,60 分での発現アレイを追加した。そして見出した早期活性化転写因子群の誘導が中心となって、転写カスケードが成立することを確認し、さらにVEGF 依存的な血管新生を主導する重要早期誘導転写因子群 (EGR2, EGR3, KLF4, NR4A1,2,3, ATF3) などの制御領域のエピゲノム修飾の動きをヒストン修飾特異的抗体を用いた ChIP-seq でゲノムワイドに捉え、その変化を ChIP-qPCR 法にて Validate した。特に H3K27me3 修飾が入ったまま、 H3K4me3 修飾が VEGF 刺激で増えて Bivalent になる仕組みの解明に取り組むため、H3K4me3 修飾を入れる トリソラックス酵素群のアダプタータンパク PTIP がどうして上述した特定の重要転写因子群の制御領域に濃縮するのか、EGR3 転写に必須な転写因子3つ (NFAT, CREB, SRF) との相互作用を免疫沈降法で確認した。その結果、 NFAT1 が PTIP の N 末 BRCT ドメインに特異的に結合し、 NFAT と共に核内移行することでエピゲノムスイッチを引き起こす新たな機構を見出した。さらに H3K27me3 修飾がありながら転写が進む機構を解明するため、ポリコーム (PRC)2 がこの bivalent 領域に必要かどうか EzH2 や Suz12 のノックダウンで調べたところ、他の抑制領域と違い、bivalent 領域ではEzH2, Suz12 のノックダウンで逆に転写が抑制され、PRC2 が転写活性化に寄与する可能性が示唆された。現在はPRC1 バリアントの結合可能性を調査しており、全てまとめて論文化する方針である。
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