研究課題
RBがん抑制遺伝子産物がほ乳類細胞周期制御(細胞自律的機構)の中心分子であることは疑いない。しかし、ほ乳類のものとよく似たサイクリン群やクロマチン再構成因子複合体を具する酵母がこの遺伝子を持たず、植物も含め多細胞生物への進化とともにこの遺伝子が出現したのには、深い理由がある。我々は、がんの悪性進展過程において頻繁に起こるRB不活性化が、膜脂質成分の活発な構成変換や種々のサイトカイン・ケモカイン・増殖因子の分泌を促進し、隣り合う細胞や細胞外の環境への活発な働きかけを誘導する現象を見出した。本研究は、まずRBの非細胞自律的な機能を徹底的に探索することによって、がん微小環境研究に新展開をもたらし、単なるRB研究を超えて、新規かつ汎用性のある制がん標的分子を発見することを目指した。RB不活性化によって誘導されるIL-6-STAT3 サーキットが肉腫、乳がん、前立腺がんの自己複製に寄与することを見出した。RB不活性化によるIL-6の発現誘導には、脂肪酸酸化の亢進によるミトコンドリア活性化とそれによるJNK活性化が寄与することも判明した。また、STAT3の活性化は、いわゆるLIFシグナルの活性化に加え、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体IおよびIIIの発現を制御する事によってミトコンドリア由来の活性酸素を抑制し、細胞の自己複製能の維持に関わることも明らかになった。RB不活性化細胞がCCL2およびCCR2に依存して免疫不全マウスにおける腫瘍原性を発揮すること、この現象に免疫細胞のリクルートが関わること等が明らかに成り、RBステータスと腫瘍微小環境の関係についても情報を蓄積している。
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