研究課題
骨髄異形成症候群(MDS)におけるRNAスプライシング関連遺伝子の変異は、MDSの病態形成に重要な遺伝子異常と示唆されるが、その機序は不明である。SF3B1変異は、環状鉄芽球を有する病型に高頻度かつ特徴的に観察され、環状鉄芽球形成に関わる分子異常と推測される。そこで、SF3B1変異が生じることにより、鉄代謝・ヘモグロビン合成等に関わる遺伝子のRNAスプライシングに異常が生じ、環状鉄芽球が出現するとの仮説のもと、RNAシーケンスを用いたスプライシング異常の標的分子の探索を行った。50例のMDS患者由来のCD34陽性造血細胞からtotal RNAを抽出し、RNAシーケンスを行った。18例にSF3B1変異を、15例にSRSF2変異を認め、既知のスプライシング分子変異が同定されなかった16例をコントロールに解析を行った。SF3B1はU2snRNPを構成し、イントロンの3’側のブランチポイントの認識を担っているとされるが、SF3B1変異例においては、3’側のスプライシングサイト(SS)が5’側にずれる特徴的な変化が様々な遺伝子において観察された。SSがずれることにより、その遺伝子はframe shiftを生じると推測されるが、同様の変化は骨髄単核球を用いた多数例での解析でも再現された。変異例に共通して3’側のSSに変化を来す遺伝子には、鉄代謝に関わる遺伝子なども含まれ、有望な標的遺伝子候補として、現在、追加の解析を進めている。一方、SRSF2変異例においては、同様の変化は稀であったが、通常観察されないエクソンを含む転写産物が検出された。SRSF2はSF3B1同様に3’SSの認識に関わるが、エクソン上に存在するexon splicing enhancerと呼ばれる領域に結合することが知られており、生理的な機能の違いにより、変異例で観察されるスプライシング変化も異なると推測された。
1: 当初の計画以上に進展している
臨床検体のRNAシーケンスを通じて、本研究の目的である、スプライシング関連遺伝子変異に特徴的なRNAスプライシング異常ならびに標的遺伝子候補の同定まで達成している。
RNAシーケンス解析症例数を更に増やし、より疾患および変異遺伝子特異的な異常を絞り込むとともに、スプライシング異常の発生部位の配列解析など、候補遺伝子の更なる絞込みを行い、分子メカニズムの解明や治療への応用の可能性などにつなげていきたい。
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Nature Communications
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