研究課題
RNAスプライシング関連遺伝子の変異は、骨髄異形成症候群(MDS)の病態形成に重要な遺伝子異常と示唆されるが、その分子機序は明らかではない。RNAスプライシング分子としての共通する機能がMDS病態に関わっていると推測されるが、病型により変異遺伝子に特異性があり、病型を規定している可能性が考えられる。SF3B1変異は、環状鉄芽球を有する病型に高頻度かつ特徴的に観察され、環状鉄芽球形成に関わる分子のRNAスプライシングに異常が生じ、環状鉄芽球が出現するとの仮説のもと、RNAシーケンスを用いたスプライシング異常の標的分子の探索を行った。100例のMDS患者由来のCD34陽性造血細胞からtotal RNAを抽出し、RNAシーケンスを行った。32例にSF3B1変異を、18例にSRSF2変異を認め、既知のスプライシング分子変異が同定されなかった症例をコントロールに解析を行った。SF3B1変異例においては、3’側のスプライシングサイト(SS)が14塩基、5’側にずれる特徴的な変化が観察された。本異常が生じた遺伝子はフレームシフトに基づく終止コドンが途中で入り、多くの遺伝子はNMDで処理され、低発現もしくは発現されないと考えられた。変異例に共通して3’側のSSに変化を来す遺伝子には、鉄代謝に関わる標的遺伝子候補が同定されており、現在、機能解析を予定している。一方、SRSF2変異例においては、同様の変化は稀であり、通常観察されないエクソンを含む転写産物が検出され、並行して進めている変異体のノックインマウスにても同様のスプライシング変化が確認されている。SRSF2はSF3B1同様に3’SSの認識に関わるが、エクソン上に存在するexon splicing enhancerと呼ばれる領域に結合することが知られ、変異例で観察されるスプライシング変化の違いが表現型の形成に関与することが推測された。
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Nat Commun
巻: 6 ページ: 6042
10.1038/ncomms7042.