研究課題
人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、がん幹細胞へ分化する過程における細胞の変化を網羅的に解析し、がん幹細胞生成のメカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、これまでに用いてきたがん細胞株の培養上清に加え、iPS 細胞をがん幹細胞へ誘導する効果を示す非変異原性化合物を探索し、選出された候補化合物が遺伝子に変異を誘起しない非変異原性物質であることを確認した上で、これらを用いてiPS細胞に引き起こされる変化を遺伝子発現プロフィール、プロテオミクス、メタボロミクス,エピジェネティクスの面から時系列を含めてがん幹細胞化まで検討し、iPS細胞からがん幹細胞への変化を解析して、そのメカニズムの解明を目指した。マウスiPS細胞をフィブロブラスト誘導因子存在下で培養し分化させた後、フィブロブラストの形質発現とnanogの発現を確認すると同時に、CD24陽性CD44陽性細胞が含まれていることも明らかにした。iPS細胞のがん幹細胞化に関連する標的タンパクとシグナル伝達経路の詳細な解析と妥当性を検証するため、インシリコでの検討とツール開発を行った。これまでの検討から、iPS細胞のがん化を促進する経路については、多数のキナーゼが関連していることが示唆され、キナーゼ阻害剤の標的選択性を正確に評価出来るシステムの構築に取り組んだ。また、化合物がどのような作用機構でiPS細胞のがん化に影響しているかを調べるため、化合物の作用標的と関連するパスウェイ推定した。NCBIの化合物データベースPubchemを検索し、123種類のがん化抑制化合物の作用標的候補が得られ、多様な作用標的が含まれることがわかった。さらに、これらの作用標的が関連する生体内のパスウェイでも、12の関連候補が得られた。この解析結果からキナーゼ阻害が多くのパスウェイに影響を及ぼしており、今後のメカニズム解明につながることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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