研究課題
近年接触抑制シグナルの鍵経路として、強力ながん抑制シグナルとしてHippoキナーゼ経路が脚光を浴びている。Hippo経路はショウジョウバエにおいて初めて見出され、接触抑制、細胞増殖、細胞死、幹細胞維持、器官サイズの制御シグナルとして注目されている。生化学的には細胞接触やストレス刺激後に、MSTキナーゼが活性化された後、LATSキナーゼが活性化され、活性化したLATSキナーゼは、細胞増殖に正に働く転写共役因子YAP1/TAZをリン酸化して、核から排除し、或いは蛋白質崩壊に導くことによって、主に細胞増殖に作用する標的遺伝子の転写を負に制御する。しかしながらこれまでに作製されたHippo経路遺伝子欠損マウスの多くは胎生早期に致死であったため、成体におけるHippo経路各分子の生理的役割やその破綻による腫瘍発症の有無の多くが不明であった。一方、子宮頚がんの発症はヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であり、HPVの標的遺伝子としてはp53やRB1などのがん抑制遺伝子変化が重要であるものの、これら各々の不活化のみでは、早期からの子宮頚部の異形成を再現できず、それ以外の遺伝子変異の関与が示唆されていた。また子宮頸がんにおけるHippo経路研究の報告はまだ見ない。申請者らはMOB1A/1B二重欠損マウスに高頻度に子宮頸がんが起こることを見出した。またこれらの子宮頚部では細胞増殖の亢進、未分化性の亢進などを認めた。さらにヒト子宮頸がんにおいても高頻度にYAP1が亢進していることを見出した。このように子宮頸がんの発症にHippo経路が重要であることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
既に、MOB1A/1B二重欠損マウスに高頻度に子宮頸がんが起こることを見出していること、ヒト子宮頸がんにおいても高頻度にYAP1が亢進していることを見出していることから、当初計画はほぼ満たされたと考える。これらのことから本研究課題は、ほぼ計画通りに進行しているものと思われる。
今後HPVE6, E7によるYAPの活性化をin vitroで検討するとともに、HPVE6, E7による子宮頚部異形成がYAP1変異で回復するかどうか、p53やRB1の不活化との相乗作用を検討して、論文を投稿予定である。
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