エクソソームは癌発症等により細胞から放出される小胞体であり、新たな細胞間コミュニケーションとして注目されているが、特定タンパク群のエクソソームへの輸送機構は不明である。申請者は新たな翻訳後修飾因子の探索を目的として、バイオインフォマティクスにより、進化的に高度に保存されたUBL3を同定した。UBL3がユビキチンやSUMOのように翻訳後修飾因子として作用する事だけでなく、エクソソーム中へ輸送されている事も見出していた。UBL3の生理学的な作用を知るために、当該年度において、申請者はUBL3-KOマウスを用いた研究を行った。UBL3抗体を用いた検出により、内在性UBL3もエクソソームに局在する事を見出し、大脳と大腸と小腸においてもUBL3依存的な翻訳後修飾を観察した。野生型及びKOマウスの血清からエクソソームを精製し、エクソソーム総タンパク質を電気泳動法により解析を行った。その結果、野生型に比べKOマウスでは60%の総タンパク質が消失していた。電子顕微鏡による形態観察を行った結果、KOマウスからのエククソームは野生型に比べ検出には若干の調整が必要であるが形態的には異常は検出できなかった。更に、ナノサイトによる測定の結果、野生型とKOにおいて、粒子数と平均粒子直径において有意差は検出できなかった。エクソソームからRNA精製し、リアルタイムPCRを行った結果、エクソソーム中のmiRNA存在量は野生型とKOにおいて有意差は検出されなかった。以上の結果は、UBL3はエクソソーム粒子濃度、粒子径、miRNA量には影響を及ぼさずエクソソームへ輸送されるタンパク群にのみ影響を及ぼしている事を示す。エクソソームを介したタンパク伝播は、癌転移のみならず、アルツハイマー病やプリオン病などの神経障害にも関わっている事が知られている。本研究成果はエクソソームを介した新たな医療薬への応用が期待できる。
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