研究実績の概要 |
ガン細胞の増殖、腫瘍化に密接に関わるエンドセリン受容体が形成するヘテロ二量体の、構造上のクロストーク効果やそれが引き起こすGタンパク質活性化能の変化を検討するために、平成26年度は、エンドセリン受容体のナノディスク膜への再構成法の確立を目指した。 まずは、ETAR、ETBRモノマーをナノディスクに再構成する系を確立するために、N末テールにFlagタグを挿入したETAR、ETBRやC末テールに1D4タグ、HAタグ配列を持つETAR 、ETBRを昆虫細胞で過剰発現する組み換えバキュロウイルスを単離し、リッターレべルで過剰発現させた。イムノアフィニティ―カラムとそれに続くニッケルアフィニティ―カラムによって精製できたが、ETARの発現量が十分でないので、想定以上の大量発現細胞が必要であることがわかった。次にリポタンパク質apoA-I誘導体(膜足場タンパク質(MSP))を大腸菌で誘導発現し、Ni-アフィニティカラムで精製し、ミリグラムレベルでMSPを回収した。精製したFlag-ETBR, apoA-Iタンパク質とリン脂質(POPC,POPG)とを混合し、Biobeadsによって界面活性剤を除去してrHDL粒子を調製することが可能になった。ショ糖密度勾配遠心によってrHDL粒子を分析したところ、biobeads処理したものだけに特異的に低密度画分にrHDL粒子を検出し、ETBRを含んでいた。得られたrHDL粒子について、ET1依存的なGi活性化能を調べたところ、リポソームに再構成したETBRと同等の高い活性化能を確認した。 本研究課題と並行した構造解析研究によって、ヘリックス4, 5を介して二量体は互いに相互作用すると考えられるが、ETBRのヘリックス5のフレキシビリティが極めて高く、細胞外側がET-1結合によって大きく曲がる性質があることが判明した。
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