研究課題
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はがんを認識する抗体の定常(Fc)領域とNK細胞などの免疫細胞の有するFc受容体(FcR)の結合により惹起される。NK細胞上のFcRとしてFcγ受容体IIIa (FCGR3A) があり、818番目の塩基がアデニン (A)からシトシン (C)となることで、158番目のアミノ酸がフェニルアラニン (F)からバリン (V)へと変化する一遺伝子多型では抗体に対する親和性が増強し、標的細胞に対し強いADCC活性を示すことが知られている。臨床的にも、FCGR3Aの親和性が抗CD20抗体(Rituximab)を用いた抗体療法の治療成績に有意な影響を与えることが報告されている。そこで本研究課題は、NK細胞に高親和性FCGR3A遺伝子の導入を行うことでADCCを増強し、抗体療法の治療成績を向上させることを目的として実施した。平成27年度は、前年度に作成した高親和性FCGR3A遺伝子あるいは低親和性FCGR3A遺伝子を発現させるためのレトロウイルスベクター(リポーターとしてGPFが付加されたもの)を低親和性FCGR3A遺伝子ホモ接合のドナーのNK細胞に遺伝子導入し、発現を確認した。次に遺伝子導入されたGFP陽性NK細胞をセルソーターにて分離し、Rituximabとの結合能を解析し、高親和性FCGR3A遺伝子を遺伝子導入したNK細胞はRituximabに強く結合することを確認した。さらに、CD20陽性株であるJY細胞を標的として、Rituximab存在下での遺伝子導入NK細胞の腫瘍細胞傷害活性を検討したところ、高親和性FCGR3A遺伝子を遺伝子導入したNK細胞での強い傷害活性が示された。以上のことから、NK細胞上のFc受容体の親和性を高めるような遺伝子改変技術はADCC活性を高め、抗腫瘍効果の増強につながることが示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 15件)
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