研究課題
血小板は、血小板凝集に伴う顆粒内増殖因子の放出など様々な機構により腫瘍増殖や転移を促進している。抗血小板抗体である抗GPIbα抗体を投与して血小板減少症を惹起した担がんマウスモデルでの腫瘍増殖を検討したところ、腫瘍体積の増大という想定外の現象を観察した。そこで血小板除去の際の腫瘍増殖に関わる分子機構を解明し、その分子機構を標的としたがん治療薬創製を進めることを目的とした。ヒト肺扁平上皮がんPC-10細胞を皮下移植して形成された腫瘍について、抗血小板抗体投与で血小板を除去した際の腫瘍とコントロール抗体投与の場合の腫瘍から各々mRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行なった。GO解析でepithelium/epidermis development, epithelial/epidermal cell differentiation, peptidase activityの制御に関わる因子がリストアップされ、がん細胞の運動能、浸潤能などの性質の変化が予想された。2サンプル以上で共通して発現減少が認められた遺伝子として、ADAMDEC1, いくつかのMMPを含むmatrix metalloprotease、WNT9B、SPO11、DNMT3Lなどがリストアップされたが、腫瘍増大に繋がることが示唆されるものはなかった。一方、血管内皮マーカーであるCD31に対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、血小板を除去すると腫瘍内に血管が増生していることが確認された。しかし、マイクロアレイの結果では血管新生を促進的に制御するような因子の発現変動は観察されなかった。そこで、血管新生に関与する血小板由来のPDGFのレベルを測定したところ、血小板除去時にはほぼ検出限界以下まで低下していた。すなわち、血中サイトカインのレベルは血小板除去によって大きく影響を受けることが明らかとなった。
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Oncotarget
巻: 7 ページ: 3934-3946
10.18632/oncotarget.6598
http://www.jfcr.or.jp/chemotherapy/department/fundamental/index.html