研究課題
平成26年度は以下の研究を次世代シークエンサー(NGS)とmRNAアレイ解析を用いて行った。1.GIST T1 細胞株とGIST T1株から誘導された耐性細胞株の解析:GIST T1親株とイマチニブ耐性前(persistent cells)株とイマチニブ耐性株(resistant cells: R2, RA2, R8, R9でR8, R9はKIT二次遺伝子変異があり、R2, RA2は二次遺伝子変異が無い)を作成した。それぞれに通常のNGS解析並びにアレイ解析と299 候補SNV に対してUltra-deep sequencingを行った。その結果、①.親株に比しpersistent cellsでは遺伝子変異は殆ど無くトランスクリプトームで大きな変化を示した。一方、耐性株では遺伝子変異が培養時間依存性に高くなっていたが、トランスクリプトームの変化は殆ど無かった。②.Ultra-deep sequencingを行ったがイマチニブ耐性後に確認されたKIT二次遺伝子変異は、親株には確認できなかった。従って、耐性変異の時期は確認できないものの、イマチニブ処理前に耐性変異を持つ細胞が存在する確率は非常に低いと考えられた。③.SNVを用い分子進化図を書くと4つの耐性株は、ある時点で一気にすべて異なる方向に分かれていた。2.臨床検体での解析:イマチニブ治療前と耐性後の凍結検体のある2症例でNGSエクソノーム解析を行った。耐性株で認められるSNVs/indelsで、両症例共通のものはKIT二次遺伝子変異のV654Aしかなく、上記細胞株で共通して見られたものも認められなかった。以上より、耐性細胞が治療前に存在する確率は低く、イマチニブ処理時に解毒やアポトーシス関連遺伝子の発現があり生き残りやすい細胞から耐性腫瘍は発生しているが、耐性を起こしやすい細胞集団が治療前からあるとは考えられなかった。
2: おおむね順調に進展している
現在、まとめの論文作成中で、バイプロダクトの成果も見られた
本研究の成果は現在論文作成中である。本研究から、別途新たな知見が得られた。1つには、バイプロダクトとして変異KITチロシンキナーゼの活性化する細胞内の場所が、wild typeとは異なった場所で活性化しており、新たな研究でオルガネラを標的とした治療薬開発の可能性が見据えられた。また、本研究からは、イマチニブ存在下で腫瘍細胞が生き残れる条件はあるが、二次遺伝子変異が起こりやすい状況はないことが解った。したがって、今後問題となるのは、「イマチニブ存在下で腫瘍細胞が生き残れる条件」を明確にし、これを腫瘍から取り除くことで(コンビネーション治療)、より治療効果の高い治療法の開発する理論的根拠を明確にすることが必要である。
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