研究課題
ファイトプラズマは植物の細胞内に寄生する病原微生物であり、世界中で多くの作物栽培に被害を与えている。本研究では、ファイトプラズマのゲノムデータを活用することで、ゲノムにコードされる遺伝子の中から、植物免疫など宿主をコントロールする因子を同定し、その作用機作を明らかにすることを目的とする。本研究では昨年度、タマネギ萎黄病ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma asteris)のゲノムにコードされる分泌タンパク質を恒常的に発現するシロイヌナズナ形質転換体を網羅的に作出し、花器官の形成を制御する因子Phyl1を同定した。今年度は、前年度同定した宿主制御因子Phyl1の相互作用解析、および機能解析を行った。Phyl1は、シロイヌナズナの特定の花器官形成因子MTF (MADS-box transcription factors)に結合し機能阻害する。そこでPhyl1によるMTFsの機能阻害機構を調べるため、YFP融合MTFs(AP1, SEP3)を作出し、Nicotiana benthamiana葉にPhyl1と共発現させ、MTFsの細胞内所在や蓄積の様子を解析した。その結果、両MTFともにYFP蛍光が消失し蓄積量が低下したため、Phyl1存在下でMTFsは分解されると考えられた。次いで、MTFの分解機構を調べるため、植物が有するタンパク質分解機構との関連を調べたところ、ユビキチンプロテアソーム系阻害剤処理下でSEP3の分解が抑制された。さらに免疫沈降法を用いてYFP-SEP3を回収し抗ユビキチン抗体で検出した結果、Phyl1共発現時により強いシグナルが検出され、YFP-SEP3のユビキチン化が促進されていることが示唆された。以上より、PHYL1は宿主のユビキチンプロテアソーム系を介してMTFs分解を誘噂することが示された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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