研究実績の概要 |
Aeropyrum属古細菌は、当研究室が浅海・深海熱水孔より世界に先駆けて見出した超好熱古細菌である。本研究では、本古細菌をモデル生物として、3つの超生物界の一角を担う古細菌において、ウイルスによって駆動されるゲノム進化過程を解明する。今年度の成果は以下のとおりである。
1)本課題で見出したAeropyrum属古細菌の新規溶原化ウイルスの詳細な性状を明らかにした。本ウイルス粒子は直径約60 nmの球状を示し、AGV1は18,222 bpの2本鎖環状ゲノム上に 34個の遺伝子を保有した。宿主のゲノムに挿入されておらず、エピソームとして一部の細胞のみが保有することが明らかとなった。ウイルス誘導条件では 急激に増殖可能となり、複製された娘ウイルスは周囲の細胞に再感染し、増殖を阻害する。Aeropyrum属古細菌では未報告のGlobuloviridae科ウイルスと類似し、Aeropyrum globular virus 1 (AGV1)と命名し、原著論文として現在投稿準備中である。
2)静岡県熱川温泉・陸性熱水環境より、Desulfurococcales科に属する球形の新規超好熱古細菌を分離した。本菌は本科に属する絶対好気性の超好熱古細菌としてAeropyrum属に次ぐ分離事例である。本菌の至適増殖温度とpHは、それぞれ90℃と6.5であった。 本菌はトリプトンやリンゴ酸、コハク酸といったペプチド、アミノ酸や有機酸の資化能が認められた。16S rRNA 遺伝子に基づく分子系統解析の結果に加えて、陸性温泉に由来する本科超好熱性古細菌は未報告であることから新属種として記載を進めている。
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