研究課題/領域番号 |
26640116
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
末次 正幸 立教大学, 理学部, 准教授 (00363341)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA / ゲノム / 合成生物学 / DNA複製 |
研究実績の概要 |
近年の合成生物学の進展にともなって長鎖DNAを増幅するための技術に対する期待が高まっている。大腸菌細胞は自身の4.6 Mbにもなる巨大な環状ゲノムDNAを繰り返し安定に増幅する事が出来ている。本研究では、独自に構築した複製サイクル再構成系を用いて長鎖環状DNAを増幅させるための検討を行っている。この複製サイクル再構成は大腸菌ゲノム複製に機能する全25種類の蛋白質を用いて複製の開始から姉妹環状DNAの分離までの「複製サイクル」の反応の繰り返しを試験管内に再構成したものである。長鎖環状DNAを調製するためλファージの組換えシステムを利用して大腸菌のゲノムを環状に抜きだす「ポップアウト法」を構築し、この方法により200kbまでの巨大な環状DNAをスーパーコイル構造を維持したまま精製する事に成功した。そしてこの200kbの巨大環状DNAを鋳型にして複製サイクル再構成系の反応をおこなったところ、30度、3時間の反応で増幅産物の産生を確認する事ができた。増幅産物のなかにはスーパーコイル構造を持った200kb環状DNAの産物も含まれている事が確認された。今までに、試験管内でこれほどまでに巨大なDNAを環状のまま増幅できるといった反応系は報告されておらず、世界的にも初めての例である。複製サイクル再構成系は、200kbを超えるさらに巨大な環状DNAを増幅するポテンシャルも持つと思われるが、今のところ環状DNAとして安定に調製できるDNAサイズが200 kbまでなので、今後さらに巨大な長鎖環状DNAを調製するための手法の検討が1つの課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、「200kbもの長大な環状DNAを環状のまま丸ごと増幅する系の構築」に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
現在構築している系では、スーパーコイル構造をもった巨大環状DNAの増幅産物を得る事に成功しているが、1つの問題点は、副次的な直鎖状DNAの産生である。これは複製反応中に長鎖DNAが物理的に擦り切れたために生じているものと考えている。現在この点を改善したいと考え、DNAの切断を抑えるための反応条件等を検討している。残額は次年度分とあわせ試薬、消耗品の購入に割り当てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度のにおいてDNA増幅系を簡単かつ安定に動かす事が出来るようになった。これを受けて次年度の課題に携わる人員(学生)をさらに2名増やす事とした。よって、次年度の消耗品にかかる費用が予想よりも必要となる事が予想されたので、この分を次年度使用額として計上した。
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次年度使用額の使用計画 |
長鎖環状DNAの調製法および増幅反応の条件検討にかかる試薬等消耗品類の購入にあてる。
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