研究課題/領域番号 |
26640117
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯田 哲史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (60391851)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | リボヌクレオチド / rNMP / ゲノム / 損傷 / 定量 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、内因性のゲノム損傷として染色体DNA合成時にDNAポリメラーゼが、本来RNAの構成因子であるリボヌクレオチドを、誤って取込むことによって生ずるrNMPに注目し、次世代シークエンサーを用いたrNMPの絶対定量法(Ribonucleotide-sccaning Competitive Quantification sequencing: RisCQ-seq法)の確立および、大量なデータ解析の基盤の確立を行いました。(I) rNMP検出ライブラリーを次世代シークエンサーで解析した結果得られる大量のリードデータを自動で処理し、全ゲノム領域において塩基レベル・DNA鎖レベルでrNMPの存在頻度を算出・解析する解析パイプラインを確立しました。(II)既知の合成DNA-rNMP断片を混在させたライブラリーを用いて野生型株、およびrNMP除去が出来なくなるリボヌクレアーゼH2遺伝子破壊変異体rnh201のG1におけるrNMPの蓄積頻度を解析しました。(III)野生型およびrnh201変異体は、極めてよく似たゲノムのrNMP蓄積パターンを示し、ゲノム領域・DNA鎖特異的にrNMPの蓄積が変化することを見出しました。野生型および変異体の比較では、ChIP-seqなどで行われている従来のrNMPのリード分布による解析では極めてよく似たパターンを示す全体量の異なるサンプルの比較をすることは困難でしたが、RisCQ-seqでは、常に野生型のrNMP量がrnh201変異体のにくらべて低くなることを確認出来ており、サンプル間・ゲノム領域間でそのまま比較可能な絶対定量性を持っていることを明らかにしました。(III) rNMPが特異的に蓄積する機構について解析を行ったところ、ゲノム配列の特異性と高い相関があることを見出しました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度に入り、所属研究機関の異動などがあり、研究の進行に遅れがでる結果となったほか、本研究の中核課題であるrNMPの定量を正確に行うため、当初予定になかった標準試料の作製を行うことにしました。標準試料の作製に必要な技術的な工夫を行うのに想定以上に時間を要したため当初の予定から遅れてしまいました。また、次世代シークエンサーデータ解析のためのパイプライン構築が複雑化し、パイプラインの検証と、データ解析に時間を要したため研究に遅れがでる結果となりました。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として、rNMPの蓄積パターンが株間や培養条件であまり変化しないことを見出しているので、RisCQ-seq法によるrNMPの絶対定量が、ゲノム変異と関連があるかをデータ解析を中心に明らかにします。現在までに、挿入・欠失変異が頻発する領域が、特徴のあるrNMP蓄積パターンを示すことを見出していることから、rNMP蓄積のパターンの数値化を行い、rNMP定量による挿入・欠失変異のリスク予測が出来るようなパラメータの創出を行い、成果の論文化による発表を行います。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属変更に伴う、研究環境の整備に想定以上に時間を要してしまったため、研究の進行状況が遅れてしまいました。研究進行の遅延に伴う、成果発表用の予算や学会発表用の旅費が次年度使用予算として生じました。 また、雇用予定であった実験補助者を見つけることが出来なかったため、雇用予算の一部を価格改訂に伴う次世代シークエンサー試薬に流用したが、残りが次年度使用予算として生じました。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分は、研究成果発表のための、追加実験用の研究試薬購入と、学会発表のための旅費・参加費、および論文投稿・発表用費用として適正に使用する予定です。
|