研究課題
ゲノム安定性は個体維持、種族保存に必須である一方、一定のゲノム不安定性は進化、癌化の原動力として働く。申請者らは新規ゲノム多型であるコピー数多型(Copy Number Variation:CNV)部位での体細胞変異を腫瘍組織で解析し、10kb以下の断片のコピー数の増減を高頻度に示す症例群を見出し、CNV不安定性と定義した。そこでまず、乳がん、胆道がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がんについて、同一症例の非腫瘍部と比較したところ、CNV不安定性は、染色体の大規模な異常とは独立な形質で、新規ゲノム不安定性であると考えられた。この、CNV不安定性は、胆道がんでは組織学的に、より悪性な腫瘍に認められた。次に、乳がんにおいてCNVの異常を示す領域から新規がん遺伝子を同定することを目指して、20例のsolid tubular adenocarcinoma DNA のCNV異常を解析した。この結果、全プローブの40%に相当する合計4162か所のCNV領域で、コピー数の増減を認め、特に第8染色体上の異常が相対的に多く認められた。異常を示したCNV断片内の遺伝子に着目して、臨床・病理学的指標との相関を検討したところ、核異型度1または2と、3との差に相関するCNV異常が、p<0.001の基準で合計 161遺伝子得られ、最も多数同定できた。これらの異常の意義をGene Ontology により解析すると、白血球、B細胞、リンパ球などの細胞活性化や、生殖・発生過程の細胞死に関わる遺伝子群であることが明らかになった。これらの遺伝子の中には、がん遺伝子、がん抑制遺伝子として報告されている遺伝子が含まれ、乳がんの進展に関わる可能性が示され、さらなる解析を続けている。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 22784
doi: 10.1038/srep22784.
J Exp Med,
巻: 213 ページ: 123-138
doi: 10.1084/jem.20150519.
J Cancer Therapy
巻: 6 ページ: 1093-1102
doi org/10.4236/jct.2015.612119
Oncotarget,
巻: 6 ページ: 24895-24903
doi: 10.18632/oncotarget.4366.
PLoS ONE
巻: 10 ページ: e0116637
doi: 10.1371/journal.pone.0116637.
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/hitogan/index.html