前年度、ペプチド核酸(PNA)を水晶発振子の金基板上に固定化した後、インフルエンザウイルスのゲノム(vRNA)を捕獲することに成功した。一方、vRNAにRNA結合性のある人工ヌクレオタンパク質の全ての塩基性アミノ酸をリシンに、全ての酸性アミノ酸をグルタミン酸に、全ての中性アミノ酸をアラニンに置換した人工アミノ酸を合成した。この人工ヌクレオプロテインを金基板上のPNA/vRNA複合体に作用させたところ、PNA/vRNAに人工ヌクレオプロテインが作用して、水晶発振子の振動が減少することを確認した。 本年度は、人工ヌクレオタンパク質の末端にビオチンを結合させ、これに金コロイド修飾型抗ビオチン抗体を作用させ、目視で検出することを目指した。しかしながら、人工ヌクレオプロテインの末端にビオチンを修飾したまま固相合成を進めると、ビオチンが酸化型構造をとり、金コロイド修飾抗ビオチン抗体との相互作用が弱まってしまうという課題が生じた。 そこで、人工ヌクレオタンパク質の末端にシステインを導入し、直接的に金コロイドと結合するように設計した。システイン修飾人工ヌクレオタンパク質は効果的に金コロイドと反応することを確認した。 この金コロイド修飾人工ヌクレオタンパク質をラテラルフローストリップに導入すると、PNA/vRNAにこの金コロイド修飾人工ヌクレオタンパク質が反応し、インフルエンザウイルス由来のvRNAを検出することができた。今後は、人工ヌクレオタンパク質の配列をインフルエンザウイルスのヌクレオタンパク質の実際のアミノ酸配列に近づけ、vRNAをより高感度に検出する技術を開発する。
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