研究課題
老化メカニズムについて多数の仮説が提唱されており、その一つが『ミトコンドリア異常説』である。ミトコンドリアは細胞の発電所と呼ばれる細胞小器官であり、エネルギー産生を司る、同時に細胞毒性を持つスーパーオキサイドも産生することが知られている。ヒトmtDNAは16,569塩基対の閉鎖環状DNAで、2種類のrRNA遺伝子、22種類のtRNA遺伝子、電子伝達系に関わる13種類のタンパク質コード遺伝子が存在する。本研究は、『長寿者ではmtDNAの体細胞変異の蓄積が一般的な高齢者に比べて少なく、エネルギー産生能が損なわれておらず、活性酸素産生による細胞障害が少ないため、生体システムが加齢に伴う老化現象に対して頑健性を維持している』という仮説に基づき、新生児から110歳以上の超長寿者まで、各年齢層でのmtDNA体細胞変異蓄積について次世代シーケンサーを用いて検討する。変異スペクトラム(トランジション対トランスバージョンの比率)、アミノ酸置換を伴う有害変異蓄積などにおける長寿者固有の特性を検出する。mtDNAにde novoに生じたサブクローナルな体細胞変異を同定するためには、超高深度シーケンスが必要であり、その実験・解析手法の確立を行った。残念ながら加齢に伴う大きな塩基変化は認めなかった。読み取りの深度が足りなかった可能性もあり検討中である。さらには、加齢とともに変化しているDNAメチル化についてバイサルファイトを用いた解析により検討を始めたところである。
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