研究課題/領域番号 |
26640136
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒木 仁志 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20707129)
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研究分担者 |
高原 輝彦 広島大学, 総合科学研究科, その他 (10536048)
源 利文 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (50450656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 飼育実験 / 環境DNA検出 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、環境水から水圏生物のDNA(以下環境DNA)を同定し、その検出量を基に野外生物の生物量を推定する、という新規性の高い生態学手法に取り組み、対象とするサケマス資源のみならず、広く野生生物保全モニタリングの革新的進歩に貢献することを目的としている。 H26年度は、(独)水産総合研究センター(現在、国立研究開発法人)の協力の下、同センターの管理する千歳事業所におけるさけますふ化施設でサケ稚魚期の飼育水を定期的に採水し、環境DNA量の経時的変化の推定を行った。環境DNA量の推定法は幾つかあるが、まずは次世代シーケンサーを利用した多種同時検出系において、飼育水中にどのような魚類のDNAがそもそも混入しているのか確認した。その結果、河川水を水源の一部とする飼育水ではふか施設内であっても河川起源と思われる魚種のDNAが検出されることが判明した。そこで、我々は共同研究者らの協力の下、サケに特異的に反応するプライマーおよびプローブを独自に開発し、サケの環境DNA増幅について良好な試験結果を得ている。 これらの技術確立と並行して、H26年度採水分の環境DNA量推定を進めた。集めたサンプルは1000以上にも及ぶ。これらのサンプルからの試験的推定においては、測定誤差の問題はあるものの、サケの成長に伴う経時的環境DNA量の変化は検出可能であることが示され、今後更に解析を行うサンプル数を増やしつつ、経時変化について解析を行う予定である。 また、昨年7月には申請者がホストとなり、北海道大学において海外からの演者を含む11名による国際シンポジウムを行った(共同研究者・源利文博士を含む)。サケの移住に関するセッションを第一部、環境DNAに関するセッションを第二部とし、両分野の専門家の間での情報交換を行うことで、本プロジェクトの存在意義と今後の進展に確信を得る有意義な会議となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書・H26年度実施計画にある「さけますふ化場におけるサケ稚魚期の環境DNA量変化と誤差補正法の確立」において、予定通りの採水実験が実施され、生物量推定のための基礎情報を得ることが出来た。また、「河川での環境水採集」も並行して行い、ふ化場における環境DNA量と併せて解析を行う準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
昨年初期の採水は増殖用のサケふ化・飼育施設からのサンプリングとなったため、対象となるサケ稚魚が成長に伴い飼育水槽を替えられる結果となった。これは本来のふ化施設の目的にかなっているためやむを得ない点であるが、本プロジェクトの目的からすると魚の成長の影響と、飼育水槽の大きさや形状の変化、という影響を見分けられない、という問題点となる。このため、昨年度後半からは上記ふ化施設に専用の飼育実験水槽を設置し、飼育水槽を一定にした条件下での解析が可能な準備を整えた。今年度はこの実験結果を解析することにより、より精度の高いデータが得られるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度にはサケマスふ化場、およびサケ科魚類の生息する河川での環境DNA解析を(独)水産総合研究センターの協力の下、主に研究代表者が単独で行った。これにより当初予定していた謝金等を、分子実験等の本格化でより人手の必要となるH27、H28年度へ繰り越す結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度にはバイオマス推定精度を検証するため、またより分解能の高い核DNAマーカーを開発するため、昨年度収集した1000を超えるサンプルを短期的かつ厳密に解析する必要がある。このため、継続して野外でのサンプリングを行うと共に、実験補助員を雇用し、DNA解析についても適宜ペースアップを図る。また、実験を分担することで生じた時間を利用し、研究者間での打ち合わせや論文発表、社会への情報発信を行う。
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