研究課題/領域番号 |
26640137
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
夏原 由博 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20270762)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 両生類 / マダガスカル / 生物多様性 / ニッチ / 生態系エンジニア |
研究実績の概要 |
マダガスカルは300種以の両生類が生息する多様性のホットスポットである。90%の種が固有種であり,島内での種分化と適応放散の結果であると考えられる。マダガスカルのラノマファナでは少なくとも44種のおたまじゃくしが渓流内に生息し,これらの口器の形態が8種類に分けられ,食性の特殊化が示唆されている。本研究の目的は、ラノマファナ渓流での多種の両生類の共存機構を食性ニッチの違いから解明する。そして,両生類の種ごとに渓流内食物連鎖への影響が異なることを明らかにする。森林の改変による両生類成体にとっての生息環境の変化が,幼生期の種間関係を変化させることや餌資源の変化と捕食者の増加を通じて,おたまじゃくしの食性の重複を生じさせ,特殊化した種の絶滅とジェネラリストの増加を招くことを示す。さらに,生態系エンジニアとしてのおたまじゃくしの種数減少が渓流生態系に及ぼす影響を明らかにすることである。 本年度は10月と3月の2回の現地調査を行った。自然林、二次林、農耕地のそれぞれにおいて3支流を選び、瀬と淵それぞれ4地点でサンプリングを実施した。各調査地点で、おたまじゃくしと底生動物を採集するとともに、周辺植生や流速、水質を測定し、付着藻類、浮遊粒子、デトリタス、落葉などを採取した。捕獲したおたまじゃくしは写真撮影し、麻酔薬によって処理した後、組織片を採取した。また、夜間に鳴き声の聞き取りによるカエル調査を行った。 10月の調査で4515個体のおたまじゃくしを採集した。おたまじゃくしの外部形態によって識別した支流あたり平均種数と個体数は、自然林24種1900個体、二次林12.3種1484個体、農耕地17.3種1131個体であった。いずれの地点でも瀬より淵で種数と個体数が多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地でのサンプリングは目標通り達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアDNAの多型 (シトクロムオキシダーゼ1と16SリボソームRNA遺伝子 [= cox1と16SrRNA])の多型を用いて,おたまじゃくしの種を同定する。 エタノールに保存した消化管内容物について,可能な範囲で光学顕微鏡による選別を行う。また、乾燥保存した餌候補、消化管内容物ならびにおたまじゃくしの筋肉の安定同位体比(C, N)を測定する。 前年度の調査を継続するとともに,おたまじゃくし囲い込み実験を行う。優占種数種について,除去区を設定し、下位の種の成長と食性を比較する。 また,特定の種のおたまじゃくしの存在が渓流内の生態系に及ぼす影響を評価するために,囲い組み区と対照区の川底にそれぞれタイルを置き,定期的に表面や底面の水生昆虫を採集するとともに付着した藻類を剥ぎ取って,乾燥後マッフル炉によって強熱減量を測定して比較する。
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