研究課題/領域番号 |
26640139
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
山口 泰典 福山大学, 生命工学部, 教授 (60191243)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 毛根 / ヒト / アカネズミ / マウス / ハムスター / 培養細胞 / 凍結保存 / マイクロアレイ解析 |
研究実績の概要 |
培養正常細胞を極めて低侵襲的に得る方法として、抜去した毛根部分から培養可能な細胞を得る方法を開発した。インフォームドコンセントを与えられた成人ボランティア5名より本人自身が容易に抜去できるまゆ毛を用いて、毛根に由来する正常細胞の培養を種々の培養条件下で検討したところ、年齢や性別に関係なく簡易な方法で繊維芽細胞様の培養細胞を得て、凍結保存することが可能となった。それらの細胞の最適培養条件を明らかにすると共に、継代培養を重ねることによって細胞の増殖性(集団倍化時間)がどのように変化するかを分析し、年齢に係わると思われる相違を検出した。また、野生哺乳動物のひげまたは体毛の毛根部分からバイオリソースとしての培養可能な細胞を得る目的で、アカネズミ(Apodemus speciosus)をモデル動物とし、そのひげ及び体毛由来の細胞を培養できる簡易で効率の良い方法を開発した。また、毛根を酵素処理して、細胞遊出の効率を向上させる条件を把握した。各種培養液についても検討し、細胞遊出率の向上を達成した。これによって、昨年度までは得ることが出来なかったマウスのヒゲ由来培養細胞を得ることが出来た。また、各種培養液を混合した培養液を用いて、より安価で効率的な培養条件を明らかにした。さらに、このようにして得られた毛根由来のヒトMUG/1細胞とマウスMmuH1A細胞について、マイクロアレイ用いた発現遺伝子解析を行い、それぞれの特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通りに進展したこと:毛根由来の培養細胞をヒト、マウス、アカネズミ、ハムスターから得て、凍結保存できた点は評価できる。特に、前年まで全く培養できなかったマウス毛根から培養細胞MmuH1Aを得た点は大きな進展であった。アカネズミについても新たに7種類の毛根由来細胞AspH1シリーズを得たことも計画以上の進展であった。また、毛根を酵素処理して、細胞遊出の効率を向上させる条件を把握した。培養液の種類についても検討して、細胞遊出率の向上を達成した。 計画通りに進展しなかったこと:毛根由来ヒト、マウス細胞について、初期化を達成できなかった。また、上記動物以外に、ハリネズミ、フクロモモンガ、ウサギなどの動物について、予定したように毛根由来培養細胞を得ることが出来なかった。 計画外で進展したこと:毛根由来のヒトMUG/1細胞とマウスMmuH1A細胞について、mRNAを用いたマイクロアレイ解析を行い、それぞれの特徴を把握した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトのまゆ毛及びアカネズミ、マウスのひげと体毛から、簡易な方法によって培養正常細胞が得られたので、これらの細胞は貴重なバイオリソースとして公的な細胞バンクに寄託し、広く研究に供する予定である。昨年度得られなかったハリネズミ、フクロモモンガ、ウサギなどの動物についても、培養条件を再検討して毛根由来培養細胞を得る計画である。また、これらの細胞を利用してiPS細胞のような分化多能性を有する細胞の作製を試み、作製できた細胞を生殖細胞を含む種々の細胞への分化させる条件を明らかにしていく。生殖細胞が得られた場合は、体外受精による初期発生を観察する。さらに、得られたこれらの正常細胞については、マイクロアレイによる発現遺伝子解析を行い、それぞれの特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金の有効利用を心がけ、培養液や凍結保存液などの試薬類を販売会社のキャンペーン中に購入したために、若干の金額が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
一昨年度、昨年度の経験によって、消耗品類のキャンペーン価格がほぼ分かるようになっているので、これを踏まえてより計画的な執行を行う。
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