研究課題
本研究は、ヒトにおいて種特異的にリピート増幅したNBPF遺伝子由来のノンコーディングRNA(lncRNA)が、核内で特異的な構造体様のfociを形成していることから由来している。前年度までにこのlncRNAのエンハンサーとして活性の有無を調べるために核内RNAノックダウンによって、このlncRNAレベルを著しく低下させた細胞での遺伝子発現プロファイルを次世代シーケンサーによるRNA-seq法によって検討した。その結果、NBPF遺伝子クラスター近傍のNOTCH2NL遺伝子の発現が著しく低下することが明らかになった。しかしながら、当初期待されたようなグローバルな遺伝子発現プロファイルの著しい変化は認められなかった。一方で、lncRNAを骨格として形成される核内構造体には、パラスペックルが知られているが、その骨格となるNEAT1 lncRNAとNBPF lncRNAにはどのような共通性があるのかを調べたところ、いずれのRNAも通常のRNA抽出試薬による精製過程で完全な抽出が困難であることが明らかになった。さらに、こうしたRNAの難溶性は、物理的な処理を細胞抽出液に加えることによってリカバリーできることが明らかになった。これは核内でタンパク質と共に不溶性の構造体を形成していることに起因する可能性がある。実際に、構造体形成に関わるFUSというRNA結合タンパク質が難溶性の獲得に必要であり、FUSはプリオン様ドメインを介してヒドロゲル様の凝集体を形成し、このドメインが構造体形成に必須なことを西オーストラリア大との共同研究で明らかにした。こうした難溶性は、核内で構造体を形成しているlncRNAの共通した特徴である可能性があり、今後新しい構造構築lncRNAの探索のために有効な特徴である可能性が浮上した。
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