研究課題/領域番号 |
26650004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 忠 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40165056)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低分子核酸 / DNA・mRNAハイブリッド / 遺伝子サイレンシング / mRNA分解 / 翻訳抑制 / 転写後調節 |
研究実績の概要 |
この研究は、細胞質内に低分子性の1本鎖DNAが存在し、それがmRNAとヘテロ2本鎖を形成することによって遺伝子サイレンシングに関与しているか否かを解明することを目的としている。 まず、マウスのさまざまな組織からRNAを調製し、oligo(dT)を添加後にRNase H処理を行い、actin、ACR、およびTRF2などをプローブとしてノーザンブロット分析を行った。予想に反して、RNase H添加量に依存してmRNAポリA鎖以外のmRNA領域もRNase H分解を受けてしまうことが判明した。この分解パターンはどの組織由来のRNA標品でも類似しており、組織特異性がないことが見いだされた。さらに驚いたことには、oligo(dT)存在の有無にかかわらず、mRNAがRNase Hによって限定分解を受けることも明らかになった。また、このRNase H消化に対する感受性はmRNA分子種によって異なり、精巣で発現する遺伝子を例にすれば、actinやacrosinは感受性が高く、転写因子であるTRF2やTFIIAγ、ACTはやや抵抗性があった。さらに、染色体DNAが切断されないような温和な条件でRNAを調製した場合でも、調製したRNA標品を熱やDNase Iで前処理した場合でも、RNase H消化に対するmRNA感受性に変化がなかった。これらの結果は、調製・精製したRNA標品に低分子DNAが含まれており、それがRNAとハイブリダイズしていることを示唆している。 次に、精巣RNA標品から低分子画分を調製し、アクリルアミドゲル電気泳動を行い低分子DNAを単離した。この低分子DNAの塩基配列を明らかにする目的で、DNAを種々のベクターへ挿入後に大腸菌で形質転換したが、ベクターへの連結で好成績が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で自己点検すると、調製されたRNA標品に低分子DNAが含まれていることの再現性が得られ、ある一定の成果が得られていると考えられる。しかし、目的の低分子DNA配列決定までは到達しておらず、今後とも研究が進展するように研究方法を模索しているところである。また、今年度の実績概要には記載しなかったが、低分子DNAとRNAのハイブリッド形成部位の同定に関してもactinを中心として研究を進行させており、ある程度の成果があがっている。
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今後の研究の推進方策 |
この研究計画のを遂行する上での変更点などは特にないが、低分子DNAの塩基配列決定で問題が生じている。ここがこの研究の大きなヤマであり、これさえ順調に進展すれば広がりが見えてくると考えられる。おそらく単離した低分子DNAの量的・質的な問題であり、DNAがメチル基やアセチル基などで修飾されている可能性もあるため、さまざまな観点から検討を加えて克服していきたいと思っている。また、業者委託などによって複数の方向から進めていく方策もあると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的の低分子DNA配列決定が難航し、研究の遅延が生じたため、計画していた研究計画まで到達しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に計画通り進展しなかった低分子DNA配列決定、低分子DNAの細胞内での局在、および低分子DNAとRNAのハイブリッド形成部位の同定(一部)の消耗品購入に使用する予定である。
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