研究課題
RNAのイノシン化は、本来有する遺伝情報を変換する編集機構やウイルスRNAの排除機構に使われている。この機構はまだ解明されていない点が多いが、精神神経および癌などの疾患にも関与する生物学的に重要な機能であることが示唆されている。応募者は、このRNA編集により生じたイノシンを有するRNA(i-RNA)を特異的に切断するタンパク質i-RNA切断酵素(ヒトエンドヌクレアーゼV)を発見した。この酵素の細胞における機能を明らかにし、i-RNA切断酵素によるイノシン化RNAの分子制御機構を解明することがこの研究の目的である。この酵素の機能を調べるために、様々な構造をもつRNA基質を化学合成により調整し、その結合活性および切断活性を解析する。また、細胞内での機能を解明するために、結合タンパク質解析および標的遺伝子破壊技術によりi-RNA切断酵素欠損細胞を樹立することによって、i-RNA切断酵素によるイノシン化RNAの分子制御機構を解明する。
2: おおむね順調に進展している
このRNA編集により生じたイノシンを有するRNA(i-RNA)を特異的に切断するタンパク質i-RNA切断酵素(ヒトエンドヌクレアーゼV)の機能を調べるために、様々な構造をもつRNA基質を化学合成により調整し、その結合活性および切断活性を解析した。その結果、切断ためには幾つか条件が必須であることが明らかになった。また、FLAGタグおよびHisタグを付加したi-RNA切断酵素安定発現ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞を樹立、大量培養し、細胞抽出液から、アフィニティー精製によってi-RNA切断酵素を精製した。しかし、この酵素に特異的に結合するタンパク質は検出できなかった。一方、組換えタンパク質を精製し、これを用いて抗体を作製することができた。これらの解析結果は、概ね良好と言える。
i-RNA切断酵素の細胞内での機能を解析するために、標的遺伝子破壊技術を用いてそれらの欠損細胞を樹立し、その細胞の生育にどのような影響が表れるか?もしくはRNA編集にどのような影響が示されるか、また細胞内にどれくらいi-RNAが蓄積するのかを観察する。さらに、RNAウイルスのミミックとしてdsRNAを細胞に導入することで、外来からのRNAの量をRT-PCRを用いて観察する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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