研究課題
減数分裂期では相同染色体の対合を促進するため、染色体末端のテロメアが核膜に結合し、細胞質の細胞骨格の力により、染色体が運動することが知られているが、その詳細な分子メカニズムや生物学的な意味は不明な点が多い。本研究は減数分裂期の染色体運動を制御する細胞骨格と核膜に存在するタンパク質複合体の核膜局在の仕組みを明らかにすることを目的とした。凍結した酵母細胞の電子顕微鏡解析の結果、細胞質に加えて、核内でアクチン繊維が減数分裂期特異的に観察できた。計時変化を解析したところ、減数分裂期特異的組換えや染色体追合が起きている時期での形成が確認できた。アクチン抗体を用いた免疫電子顕微鏡解析からもアクチン繊維であることを確認できた。この結果は、細胞質のみならず核内のアクチン繊維が染色体運動に関わる可能性を提示している。核内のアクチン繊維は細胞質の繊維構造と形の上では大差がない。核内での繊維の再構成モデルを作成したところ、繊維の末端が核膜まで到達していることが分かり,核膜にアクチン繊維形成の鍵分子があると考えている。染色体運動の鍵タンパク質であるMps3タンパク質の減数分裂期特異的、核膜局在の仕組みを明らかにするために、Mps3タンパク質の動態を解析した所、このタンパク質が翻訳後修飾を受け、それがリン酸化であることを明らかにした。また、2つのリン酸化酵素CDK(Cyclin-dependent protein kinase)とDDK(Dbf4-dependent kinase)が必要であることを見出した。さらに、Mps3のリン酸化部位として、核膜内膜、外膜の間のルーメン領域に存在するアミノ酸残基が同定でき、この部位に変異を導入すると、Mps3タンパク質の核膜局在が大きく低下することが分かった。減数分裂期特異的リン酸化により、その局在が制御されていることを明らかにできた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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