研究課題
出芽酵母の様な非対称分裂を行う真核生物では、タンパク質やオルガネラがその機能状態に応じて選別され、傷害を受けたものが若い細胞に分配されない仕組みが近年明らかにされてきた。しかし、傷害RNAに関してはそのような非対称分配・処分があるかは、誰も検討してこなかった。この可能性を検討するため、酵母細胞表面のビオチン化を利用して分裂寿命が進んだ「老いた」酵母細胞を濃縮し、老いた酵母におけるtRNAの細胞内分布や構造特性の検討を試みた。表面ビオチン化酵母の固定化アビジンによる回収効率に関してかなり詳細な条件検討を行い、全体で0.1%程度しか存在しない10回以上分裂を経た母細胞を10%以上まで濃縮することができたものの、それ以上の濃縮は出来なかった。また、娘細胞特異的に転写誘導されるHOプロモーターを用いた母細胞濃縮酵母株(Lindstorm & Gottschling, 2009)を用いた検討も行ったが、tRNAのFISH観察に適した培養条件では報告されている娘細胞特異的な細胞死誘導効率が得られなかった。これらに加え、必要なビオチン化試薬や固定化アビジンの費用面からも、異常修飾等のtRNAの化学的構造に関する生化学的な分析は断念せざるを得なかった。他方、表面ビオチン化法によって回収した酵母についてのFISH解析では、出芽痕の数によって明らかに分裂寿命の進んだ酵母をより分けて観察することが可能であった。tRNA-Proの分布比較では、こうした細胞と分裂直後の細胞が多数を占める通常の培養状態と大きな違いは見られなかった。現時点では、分裂寿命の若い細胞と寿命の進んだ細胞でははっきりと違いが検出できなかったが、後者の細胞が明らかに肥大していることなどから、翻訳に弱いストレスをかけ続けて分裂寿命を進めた場合などでtRNA分布に違いが見られるか検討する必要があると考えられる。
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