研究課題
内因性の代謝物質でドーパミンとパルミチン酸のアミドであるN-Palmitoyl Dopamin (PALDA)およびその類縁物質がSIRT2の内因性阻害物質であることを明らかにすることを目的とし研究を推進し、以下の成果を得た。1. PALDA以外のアシルドーパミンのSIRT2阻害活性の有無を調べる目的で、様々な炭素数、不飽和度の脂肪酸を有するアシルドーパミンのin vitro SIRT2阻害活性を検討し、SIRT2阻害活性を有するアシルドーパミンの種類を同定した。加えて、独自に取得したSIRT2の生理的基質であるコータクチンのアセチル化を特異的に認識する抗体を用いたウエスタンブロット法により、PLADAを含む複数のアシルドーパミンが細胞内のSIRT2活性を阻害することを見出した。以上の結果により、SIRT2の阻害活性はアシルドーパミンの共通した生理活性であることが示唆された。2. PALDAによるSIRT2の阻害の分子機構を明らかにする目的で、PALDAとSIRT2複合体のX線結晶構造解析を実施した。その結果、PALDAのパルミチン酸部分がSIRT2の基質結合部位の奥に存在する疎水的な空間に相互作用することを見出し、PALDAによるSIRT2阻害分子機構を明らかにした。加えて、パルミチン化およびミリストイル化リジン含有ペプチドとSIRT2の複合体構造を明らかにし、SIRT2は脱アシル化酵素活性を有することを示した。さらに、長鎖アシル化リジン基質の長鎖アシル鎖部分は、アシルドーパミンの脂肪酸部分と同様に、SIRT2の基質結合部位の奥に存在する疎水的な空間に相互作用することを明らかにした。
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