研究課題/領域番号 |
26650017
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 葉緑体 / タンパク質輸送 / プラスチド / オルガネラ / タンパク質膜透過 / 植物 / モータータンパク質 / 進化 |
研究実績の概要 |
細胞やオルガネラを囲む生体膜は疎水性のコアを持つバリアとして働く。細胞の複雑な代謝機能は様々な蛋白質が生体膜を隔てて特異的に運ばれる事で維持される。生命は進化の過程で蛋白質膜透過装置トランスロコンをごく限られた種類生み出してきた。我々は、植物葉緑体内包膜特有のトランスロコンに関して、中心因子Tic20にアフィニティタグを付加したタバコ形質転換植物を用い、1メガダルトンの超分子膜蛋白質複合体として精製し、Tic20を含む必須4因子の完全同定に成功した。さらに、このTIC複合体通過後に前駆体蛋白質が相互作用する輸送モーターと考えられる2メガダルトンの巨大膜蛋白質複合体の単離と、これを構成する新規ATPaseを含む必須7因子の完全同定にも成功した。これまでに、TICトランスロコンに関してはリポソームへの組み込み、チャネルの電気生理的解析まで成功している。組み込んだTICに前駆体は結合するが膜透過自体は起きない。そこでTICを輸送モーターと超分子複合体を形成した状態で精製しリポソームに組み込む事でATP加水分解を伴う蛋白質膜透過反応完全再構成系の構築を目指す。 これまでの解析で、形質転換タバコを利用して、TIC複合体およびモーター複合体を、単独あるいは超複合体として、高度に精製する方法は確立できた。しかし、収量という点からすると、出発材料に含まれる複合体量に比較して、最終精製標品の量がかなり少ない、すなわち 精製過程においてロスが生じている事が分かった。今後は、このロスをいかにして少なくできるか、また、精製用のタグとして、現在しようしているタグが最適なのかどうか、についても検討する必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タバコ形質転換体を用いて、 TIC 複合体およびモーター複合体は、高度に精製できる事が分かった。この事は、これらの複合体が、葉緑体への蛋白質輸送に必須であるという事を示すための、生化学的データの取得には十二分に役目を果たしてきた、その威力を発揮してきたと考えている。しかしながら、再構成や構造解析など、さらに一歩進んだ構造機能壮観の解析を行なう場合には、精製量の増加が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
精製方法のチューニングは、これまで、最終精製標品の純度すなわち精製度を第一の指標として進めてきた。そのため、現在の確立された方法では、非常にピュアな複合体は得られるが、それを電顕観察による構造解析に回したり、またリポソームに組み込んで再構成、というような、解析には向いていない。そこで、今後は、まず、タグによる精製方法を見直し、ロス空くしかも大量に精製できるような方法を検討する必要がある。また、現在使用しているタグ配列そのものにも検討を加える必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、TIC輸送装置およびモーター複合体の大量精製方法を確立した後、タバコ形質転換体の大量栽培、それを出発材料とする葉緑体の大量調製および、複合体の大量調製を行なう研究補助員を雇用し、精製作業を行なう予定であった。しかしながら、大量調製の条件検討がまだ終わっておらず、より高度な技術が必要とされる現在の解析を進めて、大量調製方法の確立を進める事の方が重要であると考えている。次年度に繰り越した研究費は、大量調製法が確立した段階で、ルーチン作業を行なう研究補助員の雇用費として使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
複合体の大量精製法が確立できれば、タバコ形質転換体の栽培作業、そこから葉緑体を調製する作業、単離葉緑体から複合体を精製する作業、これらをルーチンに行なう事ができる研究補助員を 週10~15時間程度雇用する。このようなルーチン作業は、研究の進行に伴い継続的に行なう必要があるため、27年度の使用計画で確保している人件費と合わせて雇用費として使用する予定である。
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