細胞内大規模分解システムであるオートファジーは、飢餓やストレスに対する機構だけでなく、近年の研究により多くの疾患発症に関わることが知られている。オートファジーを駆動するオルガネラであるオートファゴソームは、そのタンパク質成分に関しては多くの知見があるものの、主な膜成分である脂質においては全く理解されていない。そこで本研究計画では、我々が独自に開発したオートファゴソーム単離法を用いて、網羅的な脂質成分解析を行うことを目的としている。 当該年度においては、まず条件検討を主に実施した。我々の単離法は遺伝子導入試薬をまぶしたラテックスビーズを細胞に取り込ませ、そのビーズを回収する極めて単純な方法である。これまではMEF細胞を用いていたが、取り込み効率が良いHeLa細胞にシフトすることにした。MEF細胞ではすでにオートファジー不全のノックアウト細胞があるが、新しいゲノム編集ツールであるCRISPR/Cas9システムを用いてHeLa細胞でもノックアウトが可能になった。そのシステムで幾つかのオートファジー遺伝子が欠損したHeLa細胞を作製することに成功した。さらに、ビーズの量や精製方法も検討した結果、現在ではオートファゴソームを最大限取得できる条件を見出している。 最終年度には、これらの条件により実際にオートファゴソームを大量に精製し、リピドミクスを行う予定である。
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