細胞大規模分解システムであるオートファジーは、飢餓ストレスに対しる機構だけでなく、近年の急速の研究進展により多くの疾患発症に関わることが知られている。オートファジーを駆動するオルガネラであるオートファゴソームは、そのタンパク質成分に関しては多くのち県があるものの、主な膜成分である脂質においてはこれまで全く理解されていない。そこで、本研究計画では、我々が独自に開発したオートファゴソーム単離法を用いて、網羅的に脂質成分を解析することを目的としている。 昨年度は、オートファゴソーム単離に適する条件検討を主に実施した。我々の単離法は遺伝子導入試薬をまぶしたラテックスビーズを細胞に取り込ませ、そのビーズを回収する極めて単純な方法である。結果として、1)取り込み効率のより細胞の同定(HeLa細胞)、2)適切なビーズの量やインキュベーション時間の同定、3)最大限の収量が得られるビーズの精製方法の確立、に成功した。 最終年度は、実際に単離したビーズから脂質成分を抽出し、脂質研究のスペシャリストである東京大学の新井洋由教授、理研の有田誠教授との共同研究のもと、質量分析にて脂質の同定を試みた。しかしながら、単離したビーズからはほとんど脂質のピークは観察されなかった。同様な方法で単離したサンプルでは、オートファジー関連タンパク質がWestern blotにて確認できているので、単離はされていると考えられる。共同研究の先生方と試行錯誤し、様々な方法で脂質成分解析を行ったが、結果は同様ネガティブであった。 原因としてははっきりとはわからないが、恐らく本方法でビーズを単離する際、タンパク質は残存するものの、脂質成分は何かしらの要因で剥がれてしまっているのではないか、と思われる。今後の課題としては、脂質がビーズに残存する条件を見出すことである。
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