研究課題/領域番号 |
26650022
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
箱嶋 敏雄 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00164773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 生物物理学 / メカノバイオロジー / 分子構造変化 / エネルギー移動 |
研究実績の概要 |
本研究で実施する張力センサーデバイスのアイデアは2つあり、その一つは蛍光タンパク質の変色の設計である。これは張力による蛍光タンパク質の構造のゆがみを利用する。もう一つはエネルギー移動効率の応用であり、FRETの距離依存性ではなく、むしろ配向依存性を利用する。最小あるいは最大のエネルギー移動速度定数を与える配向に固定したドーナーとアクセプターの蛍光タンパク質ペアを設計することで達成するというアイデアである。本年度は、過去の結晶構造データを整理して、変異導入や融合タンパク質の設計等を進めた。また、種々の蛍光タンパク質が既に従来の方法での応用に供されているので、どの系で研究を進めるかは重要なポイントとなるので、物性等種々の条件を検討した。
これらの蛍光タンパク質の組み換えタンパク質を張力用のタグを付けて発現・生成して、張力のアッセイ系で有効なコンストラクトをスクリーニングする。
本研究では、張力をかけてその変化を観察するというアッセイ系2つもつ。一つが、シリコンゴムへ固定して張力を負荷する簡便な方法であり、もう一つは、AFMを用いた伸長実験で定量的なアッセイ系である。これらの実験技術の確立は来年度の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、「変色するセンサーデバイス」と「明るいFRET センサーデバイス」を目標に挑戦的な研究を開始している。前者では、種々の蛍光タンパク質の色調と構造との関係、更に張力発生時の構造変化が予測される部位と、色調に関係すると考えられるアミノ酸残基との関係を精査する必要があり、時間のかかる。一方、「明るいFRET センサーデバイス」の方の設計は、蛍光タンパク質どうしの固定の部位と方法に関する検討が必要であるが、色調変化のような量子効果等の検討が必要ではないので、比較的進んでいる。いずれにせよ、簡単な問題ではないので、とりあえずやってみて、どうなったというというわけにはいかない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年後行った調査や基礎実験、構造データの検討結果に基づいて「変色するセンサーデバイス」の設計を開始する。力を負荷した時に,N-末とC-末側ストランドをはがすように力が働く。タンパク質の構造がどれくらいの力の負荷で、どのように変化するかは構造によって大きく異なる。引き延ばしの初期の状態、数pN から20pN の負荷、でN-末あるいはC-末側ストランド、あるいはその周辺の構造変形が期待される。この付近には、色そのものや発色効率に関係した残基があるので、色調変化等が期待できる。N-とC-末端にはヒスチジンタグ(His6 あるいはHis12)を取り付けた融合タンパク質と発現する。Ni キレート樹脂は化学カップリングでシリコン表面に結合させる。ここではヒスチジンタグを用いる。本研究では、実験系を設計しようとしているので、負荷に耐えられる。シリコンゴムの延伸で蛍光観察する。有望な候補は,AFM の実験に供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「変色するセンサーデバイス」の検討等に時間がかかって、「明るいFRET センサーデバイス」の方に時間が割けなかった。特に、注目する蛍光タンパク質についての構造情報や物性情報が十分ではないものが多いことが一因であり、種々の蛍光タンパク質が応用に供されているのではあるが、それらの基礎研究が余りされていない現状が見えてきた。このような状況下では、詳細な検討が比較的軽い「明るいFRET センサーデバイス」の方をやや優先的に進める等の若干の計画に伴って、本年度計画の一部を次年度に繰り越すことで次年度使用額が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の予算は、「明るいFRET センサーデバイス」の検討等を進めるために、ドーナー側の蛍光タンパク質とアクセプター側の蛍光タンパク質の選別を進める。幾つかの候補について、融合タンパク質、SS結合等の酸化還元法、あるいは化学的カップル法で両者のペアタンパク質の生成、物性測定のための資料調製、蛍光等の物性測定のための試薬類に使用する。特に、二量体化した蛍光タンパク質の固定実験に必要な試薬類に使用する予定である。
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