本研究で実施する張力センサーデバイスのアイデアは、(A)蛍光タンパク質の変色の設計であり、これは張力による蛍光タンパク質の構造のゆがみを利用する。もう一つの(B)は、エネルギー移動効率の応用であり、FRETの距離依存性ではなく、むしろ配向依存性を利用するものである。これは、最小あるいは最大のエネルギー移動速度定数を与える配向に固定したドーナーとアクセプターの蛍光タンパク質ペアを設計することで達成するというアイデアである。過去の結晶構造データを整理して変異導入や融合タンパク質の設計等を進めた。一方、種々の蛍光タンパク質が既に従来の方法での応用に供されている。そこで、どの系で研究を進めるかは重要なポイントとなるので、物性等種々の条件を検討した。これらの蛍光タンパク質の組み換えタンパク質を張力用のタグを付けて発現・精製したが多くのものは発現がないか、弱かったか、あるいは不溶となった。これらの克服には多くの時間と労力が必要であった。また精製したものについては張力のアッセイ系で有効なコンストラクトをスクリーニングに供する準備をした。更に、張力をかけてその変化を観察するというアッセイ系を試みた。特に、AFMを用いた系では、張力負荷によるタンパク質一分子でのコンフォメーション変化による伸長とバネ定数の段階的変化(タンパク質ドメイン構造に起因すると考えられる)の見積もり等の基礎実験を繰り返して、一定の伸長実験の結果を得た。今後、これらの実験技術により、有効なスクリーニングの確立のための基礎ができた。
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