研究課題
Pro異性化酵素Pin1を対象として活性部位に保存されたH59,H157間の水素結合状態と異性化反応活性の相関を解析した.今期は,活性部位にあるC113をALAおよびSERに置換した2種類の変異体と,Pin1タンパク質の熱安定性を向上させるS138A変異体についても活性部位の水素結合に摂動を加え,活性残基間の過渡的水素結合と異性化活性の相関解析を進めた.C113側鎖は,スルフォネートイオン状態でH59と水素結合を形成し,H59はさらにH157と側鎖間で水素結合を形成するネットワークを形成している.C113A変異体では,C113-H59の水素結合を切断する状態を模している.一方で,C113S変異体はC113側鎖がプロトン化されてチオールの状態を形成した状態を模している.いずれの状態もPro異性化反応過程の中間状態として生じる状態と考えられている.興味深いことに,反応中間体を模したいずれの状態においても,H59-H157の間の水素結合は破壊され,2つのHisのイミダゾールリングの互変異性状態に大きな違いが生じることが明らかになった.この状態変化の解析には本研究で開発した重水素同位体シフトを用いた計測が必要であったことを強調する.C113との水素結合状態の変化により誘導されるHisの互変異性状態変化が,H59-H157側鎖間の水素結合形成を阻害する機構を明らかにした.アロステリックな水素結合摂動機構が,Pin1活性部位の水素結合ネットワーク中には存在する.S138A変異体では,逆にH59-H157の側鎖間の水素結合強度が野生体型より強まることが観測され,これまでとは異なるアロステリック摂動機構を見いだした.これまでの研究から,活性部位にある活性残基間での水素結合強度が強くても弱くても異性化活性は弱くなるため,水素結合強度のバランスが異性化活性には重要であることが明らかになった.
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