研究課題/領域番号 |
26650025
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
児島 将康 久留米大学, 分子生命科学研究所, 教授 (20202062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グレリン / モノクローナル抗体 / 結晶構造解析 / グレリン受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンを対象として、その受容体を活性化するモノクローナル抗体を作製し、活性型グレリン受容体の結晶構造解析のツールとして使うことを計画した。 その進め方として、まず抗原となるグレリン受容体の合成を試みた。今年度は培養細胞での発現、昆虫細胞での発現、ウイルス様粒子での発現、無細胞合成系での発現などを行った。培養細胞ではCHO細胞にグレリン受容体を安定発現させた細胞から、膜画分を抽出した。昆虫細胞ではバキュロウイルスの発現系でグレリン受容体を発現させた。ウイルス様粒子ではグレリン受容体発現CHO細胞からウイルス様粒子を調整した。無細胞合成系ではコムギ胚タンパク合成系を用いてグレリン受容体を合成した。これらの合成した受容体に対して放射能ラベルしたグレリンを使った合成グレリン受容体との結合実験によって、いずれの合成方法でもグレリン結合能を保った、すなわり立体構造を保ったままの受容体が合成されていることを確認した。 さらに本年度は無細胞合成系で発現させたグレリン受容体を抗原として使って、通常の方法でマウス・モノクローナル抗体を作成した。 一次スクリーニングには抗原との結合をみるAlphaScreen系とELISAの系で行った。また立体構造認識抗体を得るために、変成した抗原とは反応しないクローンを選択した。その結果、一次スクリーニングでは陽性シグナルのもので、変成ELISAではネガティブなものは少なかった。しかも2次スクリーニングではこれらのいずれもが、無細胞合成系に含まれるタンパク質に反応するものであることがわかった。この結果から、最初のモノクローナル抗体の作成はうまくいっていないと結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
目的のモノクローナル抗体が得られていないので自己評価は「(4)遅れている」とした。 抗原の調整は4つの方法でグレリン受容体を合成した。いずれの方法によってもリガンド結合能のある立体構造を保ったグレリン受容体が合成された。しかし合成グレリン受容体を抗原としてマウスに免疫するには、ある程度のタンパク量が必要であり、今年度には受容体合成量が多かった無細胞合成系での合成グレリン受容体をまず抗原とした。無細胞系でのグレリン受容体合成では、合成された受容体はリポソームに組み込まれた状態になる。受容体のトポロジーとしてはリガンド結合領域がリポソームの外側と内側の両方になるが、それを分けることはできないので、そのまま用いた。結果として、合成グレリン受容体よりもタンパク合成に用いられたコムギ胚タンパク質に対する抗体ができてしまった。無細胞合成のあと、リポソームは生理食塩水等で洗浄して余計なタンパク質を除いているのだが、それでもリポソーム系に合成用のタンパク質が混入してしまった。今後は合成したグレリン受容体はできるだけ精製して、抗原として使用する必要がある。
その他の合成系ではCHO培養細胞では膜画分からのグレリン受容体精製が困難であったり、発現量が少ないという問題が出てきた。またウイルス様粒子は、リガンドの高結合のものが調整できたが、抗原としてマウスに免疫するにはより多量に必要である。バキュロウイルス発現の系はリガンド結合活性のあるグレリン受容体が得られてきたので、今後はこれを精製して抗原として使うのがよいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1,抗原の調整:今年度の研究結果から、抗原としてマウスに免疫するグレリン受容体は出来るだけ精製する必要があることがわかった。グレリン受容体の合成について、培養細胞での発現、昆虫細胞での発現、ウイルス様粒子での発現、無細胞合成系での発現の4つのうち、合成後の精製が容易なのは昆虫細胞(バキュロウイルスの系)の系である。次年度ではバキュロウイルスで合成したグレリン受容体を抗原として用いることを計画している。
2,グレリン受容体欠損マウスへの免疫:またモノクローナル抗体の作成において、抗原となるグレリン受容体を欠損させたグレリン受容体欠損マウスを使うことも検討している。グレリン受容体欠損マウスは宮崎大学医学より供給を受ける予定である。
3,ナノボディ作成の試み:グレリン受容体を活性化する抗体を得て、グレリン受容体の活性型の結晶構造を明らかにするのが最終目的であるが、マウスのモノクローナル抗体では、受容体に対して抗体分子が大きすぎて、受容体活性化抗体が得られないことも考えられる。そこで一本鎖抗体であり、抗原認識部位だけで機能するナノボディを作成することも検討する。ラクダ、ラマ、アルパカ属でのグレリン受容体認識のナノボディ作成を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
モノクローナル抗体作成に使うグレリン受容体の合成の検討のために、いくつかの方法を試みたため、最終的な方法決定までに時間がかかったため。またモノクローナル抗体チェックの最初の試みがうまくいかなかったために、スクリーニングに使う予算が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
バキュロウイルスを使った昆虫細胞系でのグレリン受容体が適していると結論付けたので、今年度はこの系でのグレリン受容体の合成と、精製のための試薬などに予算を使う。またナノボディの作成を目指して、グレリン受容体タンパク質を大量に合成する必要があるため、それに予算を使う。
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