研究課題/領域番号 |
26650029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堅田 利明 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10088859)
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研究分担者 |
福山 征光 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20422389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 線虫 / microRNA / 栄養応答 / 転写制御 / 神経前駆細胞 / インスリン経路 |
研究実績の概要 |
pre-miR-235の5’末端より2.3 kb上流領域にgfpを融合させたレポーター遺伝子を作製し、gfpの転写産物の発現を調べたところ、内在性mature miR-235と同様に摂食によって顕著に抑制(飢餓時の約20%)されることを見出した。そこで、このGFPレポーター遺伝子のプロモーター領域を5’側から約100塩基対ごとに欠失したコンストラクトを作製し、GFPの発現パターンを調べた。その結果、約2 kb上流の領域をもつレポーター遺伝子は、2.3 kb上流領域をもつものと同様に、表皮、表皮幹細胞、神経前駆細胞でGFPの発現を示すのに対し、1.9 kb上流の領域しか持たないレポーター遺伝子は、表皮幹細胞でのみGFPの発現を示した。また、さらに1.6 kb上流領域までプロモーターを削り込んだコンストラクトは表皮幹細胞でのGFP発現も失うことを見出した。そこで2.3 kbのプロモーター領域のうち、1.9-2.0 kbおよび1.6-1.7 kb上流領域をそれぞれ欠失したGFPレポーター遺伝子の発現パターンを調べたところ、1.9-2.0 kb領域は表皮と神経前駆細胞におけるGFP発現に必須であるのに対し、1.6-1.7 kb領域は表皮幹細胞におけるGFP発現に必須でないことを見出した。さらに、1.9 kbのプロモーター領域しか含まないmir-235ゲノム断片は、mir-235 null変異体における神経前駆細胞の表現形を救助できないことから、表皮と神経前駆細胞におけるmir-235の発現が神経前駆細胞の静止期維持に重要であることが示唆された。上述の1.9-2.0 kb領域をベイトに酵母1ハイブリッド法を用いて結合因子を探索したところ、DNA結合タンパク質を1つ同定することができたが、そのタンパク質をコードする遺伝子の欠失変異体ではmiR-235の発現に影響は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、飢餓時におけるmir-235 GFPレポーター遺伝子の表皮と神経前駆細胞における発現に必須である領域を同定することができ、さらにその領域が神経前駆細胞の静止期維持に重要であることを示唆する知見も得た。その一方で、酵母1ハイブリッド法を用いたスクリーニングでは、これまでにmir-235の発現を促進する因子が同定されていない。しかしながら、今後表皮と神経前駆細胞での発現に必須であるシス領域をさらに狭め、より短いDNA断片をベイトとすること酵母1ハイブリッドスクリーニングの最適化が図れることと期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、表皮と神経前駆細胞での発現に必須であるシス領域をさらに狭め、より短いDNA断片をタンデムに連結したものをベイトにすることで酵母1ハイブリッドスクリーニングの最適化を図る。また、これとは別のアプローチとして、mir-235と同様の表現形を示す転写因子の欠失変異体を探索し、そのような変異体におけるmir-235の発現量を野生型と比較することで、mir-235の発現制御に関与する転写因子の同定を試みる。さらに、上述の2.3 kbプロモーターにgfp cDNAを融合したレポーター遺伝子を形質転換した線虫を突然変異体誘発剤処理し、レポーター遺伝子の発現低下を示す変異体の単離を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回同定したシスエレメントの生理的重要性を確認するべく、神経前駆細胞における静止期維持の重要性の検討実験を今年度の実験計画に加えたことで、シスエレメントの生理的重要性を確認できた。また、酵母1ハイブリッド法のコンストラクト作製や条件検討が予想以上に時間を要している。以上の2点により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
mir-235発現機構解析の実験に、遺伝子工学試薬500,000円、線虫や酵母培養関連試薬500,000円、チップやチューブなどの使い捨てプラスチック器具400,000円が必要である。
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