昨年度に引き続き酵母1ハイブリッド法を用いてmiR-235の転写調節に関与する因子の探索を進めたが、有力な候補因子を単離することができなかった。そこで、microRNAの生合成や活性調節に関与することがこれまでに示唆されたことのある因子群のなかで、機能阻害すると、mir-235遺伝子の欠失変異体と同様に飢餓条件下で神経前駆細胞の静止期からの異常活性化を示すものを探索した。その結果、TRIM-NHLタンパク質をコードするnhl-2遺伝子の欠失変異体が、ペネトランスは低いもののmir-235変異体と同様の表現形を示すことを見出した。飢餓条件下のnhl-2変異体におけるmiR-235の発現量をノザン解析にて調べると、daf-16/foxo変異体と同様に発現量の低下が見られた。さらに、nhl-2の欠失変異は、daf-16/foxoのnull変異体の表現形を増強することから、daf-16/foxoと並行する遺伝学的経路を介して神経前駆細胞の静止期を制御する可能性が示唆された。上述したようにnhl-2欠失変異体の表現形のペネトランスは比較的低いことから、nhl-2とリダンダントに機能する因子が存在すると考え、酵母2ハイブリッド法を用いて、nhl-2の相互作用因子を探索した。その結果、ヒトやショウジョウバエのNANOSオルソログであるnos-1と、CCR4-NOT複合体やデキャッピング複合体といった翻訳抑制やmRNAの分解に関与する複合体の構成因子群が単離された。さらにnos-1の機能阻害はnhl-2変異体の表現形を増強することも見出した。以上の結果より、TRIM-NHLやNANOSといった蛋白質が、miR-235、並びにCCR4-NOT複合体やデキャッピング複合体を介して、神経前駆細胞の栄養応答に関与する可能性が示唆された。
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