癌発症における貪食反応の関与 1. 発癌モデルショウジョウバエ株の作成 他研究者により報告された方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109:20549)に基づいて、細胞周期チェックポイントに必要な遺伝子の発現を抑制すると同時にアポトーシスを阻害することによって、特定の細胞群に癌を発生させるショウジョウバエを作成する。平成27年度では、前年度に引き続き、RNAiによりチェックポイント遺伝子bub3の発現を抑制し、caspase阻害タンパク質p35の強制発現によりアポトーシスを阻害した「発癌モデルショウジョウバエ株」の樹立をめざした。engrailed遺伝子のプロモーターを使ってGAL4を発現させるGAL4-UASシステムを利用し、RNAiとp35発現を翅原基の後部で誘導した。その結果、翅原基後部側の細胞群の過剰増殖が観察され、目的とするショウジョウバエ株が樹立された。今後は、この株を使って発癌に影響する外部及び体内の環境要素の同定をめざす。 2. 貪食受容体を欠損させた発癌モデルショウジョウバエの樹立 貪食反応の関与を知るために、実験1で樹立されたショウジョウバエ株において、アポトーシス阻害のかわりに貪食を阻害した時の癌の発生程度を調べる。貪食阻害は、ショウジョウバエの主要な貪食受容体であるDraperとintegrinの二つを同時に欠損させることで達成する。前年度に引き続き、染色体の交叉やショウジョウバエ株の交配を繰返して目的のショウジョウバエの作成をめざした。しかしながら、達成までの8ステップのうちで完了したのはステップ4までであり、今年度内に目的のショウジョウバエを得ることができなかった。
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