今後の研究の推進方策 |
細胞に見られる膜電位の典型的な現象としてaction potentialがある。action potentialは従来の学説によれば細胞膜を介した、細胞内外のイオンの流れによって生ずるとされる。action potentialはある条件の下では発信する。この発信現象は、生命現象特有の現象の一つであると考えられそうではあるが、これと極めて類似した現象が人工系でも観察されることは実は古くから知られている。たとえば、非線形物理学の分野では、Yoshikawaらによって膜を介した二水溶液間の発信現象として非常に深く研究されてきている[1,2]。彼らは観測した発信現象を、基本的に膜のイオン透過に帰してはいたが、不透過膜を用いても発信現象がみられることも報告している(彼らは、そのメカニズムは明らかにしていない)。細胞を用いても人工系を用いても膜を介した電位差の発信現象は、イオンの膜透過性は無関係であり、いずれも全く同じ物理科学理論に基づいた現象であると考える方がより単純明快である。自然界が、細胞と人工系を区別して電位の発信現象を生み出していると考えることはむしろ不自然である。 以上のことから、今後は人工膜系を用いて観測されるaction potentialのような電位差の発信現象を観察し、その現象が生物、無生物問わず一つの物理化学概念で説明され、ひいては膜電位の発生そのものがイオンの膜透過とは無関係であるということを証明する 参考文献 [1] K. Yoshikawa, K. Sakabe, Y. Matsubara, T. Ota, Biophys Chem 20, 107-109, 1984. [2] K. Yoshikawa, K. Sakabe, Y. Matsubara, T. Ota, Biophys Chem 21,33-39, 1984.
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