概日時計は細胞に内在する約24時間周期の振動体である。現在哺乳類の概日リズムは、概日時計遺伝子の転写・翻訳のネガティブフィードバックループにより発振すると考えられているが、ヒト赤血球においては抗酸化蛋白質ペルオキシレドキシンの酸化状態がこのフィードバックループ非依存的に概日リズムを示すという報告がある。しかしながらその発振機構などの詳細はほとんど研究が進められていない。本研究においてはマウス由来の赤血球前駆細胞株MEDEP BRC5を赤血球様の細胞に分化させ、蛋白質の酸化・還元リズムを再現性よく解析する系を立ち上げることとした。 平成28年度は、MEDEP BRC5が脱核赤血球様細胞に分化していることをライトギムザ染色により確認した後、時系列サンプルのウェスタンブロッティングによりペルオキシレドキシン、および時計遺伝子産物Bmal1の日内変動の有無を調査した。その結果、これらの蛋白質はいずれも存在量や翻訳後修飾に明確な概日リズムは認められなかった。 また、概日リズムと細胞内の酸化・還元状態との関連を確認するため、ヒトU2OS細胞にpBmal1::luc遺伝子を導入したレポーター株を用いて、レドックス制御関連化合物ライブラリーのスクリーニングを行ったところ、Bmal1発現リズムの周期や位相に影響を及ぼす化合物が得られた。今後はこれらの化合物が蛋白質レベルのリズムに及ぼす影響を確認するために、U2OS細胞、およびその時計遺伝子破壊株においてプロテオーム解析を行う予定である。
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