研究課題
がん細胞が放出するexosome中のタンパク質やmRNA, miRNAが免疫抑制等がん細胞の生存や転移に有利になるしくみを作り出している。exosomeは多胞性エンドソーム由来の小胞であることから、exosome膜を構成するリン脂質の組成ががん細胞特異的に変化している可能性は高い。そこで今回exosome膜のシグナル脂質ががん細胞自身や周辺細胞に働きかける事でがん細胞の悪性化に関与するのではないかと考え、シグナル脂質の動態を検証する事にした。第一に、exosome膜構成脂質の分析方法は確立されていないので、まず膜脂質の解析法の開発を行なった。がん細胞培養液中のexosome膜の単離方法を検討し、脂質の抽出条件などの最適化を計った。第二に、脂質動態に変化を及ぼす可能性のあるPLCd1が、がん細胞悪性化を阻害するE-カドヘリンの発現を誘導し、大腸がんにおいてがん抑制因子として機能することを報告した(Satow et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111, 13505-13510 (2014))。PLCd1を過剰発現した細胞系を確立したので、今後exosome分泌を検出する細胞系として用いる事が可能になった。
2: おおむね順調に進展している
予定していたexosome膜のシグナル脂質の測定技術の確立については、予期しないトラブルもあり、やや遅れてはいるものの見通しもついてきたので、今後は進展できると考えている。リン脂質動態に影響を持つ酵素の1つPLCd1が、大腸がんにおいてがん抑制因子として機能することを思いがけず見出した成果は大きく、今回樹立した強制発現系や発現抑制系細胞を用いてexosome分泌の違いを検出できる有用な系が確立した。
exosome膜構成脂質単離方法と脂質の抽出条件に基づき、脂質組成の網羅的解析を行なう。特にPLCd1強制発現系や発現抑制系細胞からのexosome膜の脂質組成の網羅的解析を優先して行なう。更に計画書に従い、シグナル脂質と結合する脂質結合ドメインでの検出系を確立し、悪性度の異なるがん細胞からのexosome中のシグナル脂質を測定し、悪性度との相関を検討する。
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Experimental Dermatology
巻: in press ページ: in press
in press
Cell Death & Disease
巻: 5 ページ: e1215
10.1038/cddis.2014.181
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
巻: 111 ページ: 13505-13510
10.1073/pnas.1405374111