研究課題/領域番号 |
26650041
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
三枝 智香 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (00280800)
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研究分担者 |
前田 信明 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (90202308)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘパラン硫酸プロテオグリカン / ショウジョウバエ / プロテオーム |
研究実績の概要 |
内在性ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合タンパク質を網羅的に同定するため、野生型ショウジョウバエ3齢幼虫体壁をヘパリンで処理し、遊離してきたタンパク質を質量分析(ショットガン解析)により同定した。さらにHA標識したグリピカンあるいはシンデカン、GFP-シンデカン融合タンパク質を発現するショウジョウバエを用いて免疫沈降実験を行い、これらのHSPGに結合するタンパク質の同定を試みた。以上のように複数のサンプル調製法と質量分析を組み合わせることで、既知のものを含む多くのHSPG結合タンパク質候補を同定した。これらのタンパク質について、構造および発現に関する既知情報やgene ontology解析の結果をもとに、生体内での重要性が示唆される細胞外および細胞膜タンパク質を選別した。これらについてショウジョウバエのRNAi系統を入手し、ノックダウン実験を行った。その結果、生存率の著しい低下を示したものについて、現在詳細な発現様式の解析および機能解析を進めている。 本研究において同定されたHSPG結合タンパク質候補は神経系や筋肉、表皮、気管など、多様な局在を示す。これらのタンパク質とHSPGとの相互作用解析を行うことで、これまでHSPGの発現および機能がほとんど解析されていなかった細胞や組織におけるHSPGの新たな機能を明らかにできると考えている。 以上の研究結果を平成26年度日本生化学会大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエ幼虫を用いたHSPG結合タンパク質のプロテオーム解析を行うに当たり、サンプル調製および質量分析の条件検討を行った。ヘパリンもしくはヘパリチナーゼ処理により内在性HSPG結合タンパク質を遊離させるための、反応温度、反応時間、酵素濃度、レクチンカラムによる精製の有無などについて検討し、既知のHS結合タンパク質を含む多くの細胞外タンパク質を同定できる系を確立した。 当初は、野生型に加えてHS修飾酵素変異体のプロテオーム解析も初年度に終了し、二年目以降にHSPG結合タンパク質の詳細な機能解析を行う予定であった。しかし、野生型を用いたプロテオーム解析の結果、生体内での重要性が示唆される新規HSPG結合タンパク質候補を多数同定できたため、それらの野生型における機能解析を優先して行っている。そのため、HS修飾酵素変異体のプロテオーム解析が遅れているが、平成26年度に検討して決定した条件にもとづき、平成27年度に変異体を用いた解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、解析中のHSPG結合タンパク質について引き続き野生型ショウジョウバエでの機能解析および免疫組織化学による発現解析を行う。 HS修飾酵素変異体におけるHSPG結合タンパク質のプロテオーム解析は、平成26年度に確立した実験系を用いて平成27年度に実施する。その後、HS修飾酵素変異体と野生型の結果を比較検討し、HS糖鎖構造の変化により、HSPG結合タンパク質の組成がどのように変化するかを解析する。 また野生型ショウジョウバエを用いて重要性が示されたHSPG結合タンパク質の局在や活性が、HS修飾酵素変異体においてどのように変化しているかを解析し、HS糖鎖構造の機能的重要性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるに当たり、遺伝子組み換えショウジョウバエの作製を海外の専門業者に発注する必要があったが、発注後、納品および費用の精算までに数ヶ月かかることが見込まれた。そのため年度内に精算が終了する見込みが立たなかったため、次年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に同定したHSPG結合タンパク質候補について、遺伝子組み換えショウジョウバエや特異抗体などが市販されていないのものについて、それらの作製を中心に行う。
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