研究課題/領域番号 |
26650046
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
吉川 洋史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50551173)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 光学顕微法 / 光干渉 / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞‐外部環境間接着の定量的可視化を行うための新規光イメージング法を開発することにある。特に本研究では、反射型干渉顕微法(RICM)と呼ばれる手法をベースとする。本手法では、光干渉に基づき、細胞膜‐基板間距離に応じた像コントラストをラベルフリーに得ることができる。 まず本年度は、RICMを発展させた共焦点型の反射型干渉法を用いて、がん細胞‐ゲル基板間接着の高コントラストイメージングを行った。本手法では、共焦点検出位置にピンホールを配置することで、迷光を排除し、細胞‐基板界面からの光干渉シグナルを高効率で得ることができる。本手法を用いて、異なる転移能を有するがん細胞のゲル基板上の接着様式を比較したところ、高転移性のがん細胞ほど大きな接着領域(contact area)を示す傾向があることがわかった。現在はこの統計データを解析しているとともに、他の機能性基板でも同様の傾向があるかどうかを検証している。またガラス基板上ではあるが、細胞‐基板接着面由来のラマン散乱光が検出可能であることも見出した。 また本年度は、反射型干渉法と原子間力顕微鏡を組み合わせた新規細胞‐基板間接着評価システムの構築と評価も行った。ここでは、細胞を原子間力顕微鏡のカンチレバーに固定し、基板に押し付ける。その後、細胞‐基板間の接着面を光干渉法でモニターしつつ、細胞を基板から脱離することで、接着力と接着面積・形状との定量相関が得られると考えられる。実際構築したシステムを検証したところ、①共焦点光学系や②低反射材でコートしたカンチレバーを用いることで、細胞-基板間接着面の光干渉像が高コントラストで得られることがわかった。今後は本システムを駆使して、様々な細胞の接着強度と接着面積との相関を得たいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、がん細胞‐基板接着の定量的可視化法の確立を目的としていた。これまでに共焦点型の反射型光干渉法を駆使して、ゲル基板をはじめ様々な基板を用いて光干渉像の取得が可能であることを示した。また、当初平成27年度に予定していた課題を前倒しで実施し、原子間力顕微鏡と反射型干渉法を組み合わせた新規顕微システムの構築に成功した。以上から本研究は概ね予定通り進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は構築した光干渉システムを更に改良しつつ、様々な細胞種と外部環境間の接着面のイメージングに挑んでいきたいと考えている。ここでは蛍光イメージングなども組み合わせることで、接着分子による特異的接着領域と、分子間力などの物理的相互作用による接着領域とを区別して検収することにも挑みたいと考えている。これにより細胞‐外部環境間接着に寄与する力学的相互作用の包括的理解を目指す予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、イメージング用の高強度可視光レーザーを購入予定であったが、スループットの大きな光学部品の導入することで、より安価で飛躍的なコントラストの向上が見込まれたため見送った。
|
次年度使用額の使用計画 |
H27年度もイメージング法の更なる高コントラス化や高速化を目指し、光学部品や光源などを中心に予算を使用する予定である。
|