研究課題
細胞膜剥離法(unroofing)は細胞質の可溶性成分を流出させ、細胞内のオルガネラや線維を露出させる方法である。原子間力顕微鏡の標本作製法に適用するとカンチレバーを直接細胞内に導き、オルガネラ表面やアクチン線維の表面構造を分子レベルで解析できることが明らかとなった。また、クライオ電顕と組み合わせると極めて高コントラストで細胞骨格などが観察できることがわかった。このように極めて有効な標本作製法であるが、再現性は悪く、改良が期待されていた。そこで我々は二つの細胞膜剥離法の開発改良を行った。一つは従来からの超音波を利用した細胞膜剥離法であり、他の一つは接着性を高めたメッシュやガラスによる引き剥がし法である。超音波によるunroofingは比較的再現性が良いが、市販の装置は出力が50W と高く、1W未満での制御が出来ないのが現状である。そのため、瞬間的に超音波を照射してunroofingしていたが、多くの場合、膜の内面は観察できても、大半のオルガネラや細胞骨格は流出してしまう。このため、出力0.3~1Wで有効なcavitationを起こす超音波発生装置を開発した。また、試料を観察しながら効率よくunroofingが出来るように、超音波発生プローブの位置制御装置、実体顕微鏡、水平照明装置を組み合わせ、新たに総合的な細胞膜剥離装置を開発した。これにより、AFMにより水中で細胞骨格の高分解能像や細胞膜直下の滑面小胞体の存在などを明らかにすることができた(Nature Science Reportに投稿中)。さらにmildなunroofingを求め、接着性を高めたメッシュやガラスによる引き剥がし法を改良した。これは、超音波法よりもさらに歩留まりが悪い方法であるが、特別な装置を必要としないなどの長所がある。また、核やミトコンドリアなどの多くのオルガネラを残したまま、細胞膜を剥ぐためには必須の方法でもある。現在も改良中である。
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