研究課題/領域番号 |
26650055
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷口 雄一 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (90556276)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 1分子・1細胞生物学 / 生物物理学 / システム生物学 / 超高感度顕微鏡技術 / 微細加工技術 / 生命反応の物理 |
研究実績の概要 |
本年度においては、1つ1つの細胞内に含まれるmRNA・タンパク質の個数を決定することを目的として、細胞内に含まれる全ての蛍光点を正確に計数する測定システムの開発を行った。 一般的な1分子蛍光顕微鏡の光学系においては、レーザー光をカバーガラス面で全反射させた時に生じる薄い染み出し光を蛍光の励起光源として利用するため、細胞の底面膜表面でしか1分子観察を行えない。一方で最近開発されたライトシート光学系では、シート状のレーザー光を顕微鏡の焦点面に入射させることにより、核のような細胞深部に至るまで任意の焦点面で蛍光1分子観察が可能となるが、試料をアガロースに包埋するなどの前処理が必要であるために実用上の困難がある。これに対して代表者は、独自の手法を用いることによりライトシート顕微鏡特有の試料の制約性を解消する新しいライトシート顕微鏡システムを開発してきた(特願2013-79956)。本年度においては、この顕微鏡に細胞を3次元的にスキャンするための高速スキャナと画像解析システムを導入することで、1細胞内の全分子の3次元マッピングを行うシステムを開発した。細胞内での実際の蛍光タンパク質の拡散速度を考慮したところ、1 kHzのカメラレートで撮像を行いながら、0.5 マイクロメートル/ミリ秒以上のスピードでZ軸方向の焦点移動を行えば十分に定量化に耐えうるとの試算を得ている。本研究ではこれを実現すべく、高速ピエゾステージを顕微鏡に搭載し、高速・超高感度カメラと同期させて連続撮像を行うシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた単一細胞内分子数測定システムの開発は現段階でほぼ達成し、現在はその次の目標であるmRNA・タンパク質測定に向けた準備をすでに進めている状況であり、おおむね順調に進展していると判断できる。本研究の計測対象である出芽酵母は、大腸菌と比較して強い自家蛍光を持っているため、蛍光がバックグラウンドの自家蛍光で打ち消されてしまうという問題がある。mRNAの検出には、理論上数十個の蛍光タンパク質のスポットが生じるため十分な蛍光量が確保できている。一方、タンパク質の検出は、1個の蛍光タンパク質しか目的タンパク質に融合していない関係上、十分に画像のコントラストが得られないことが分かった。そこで代表者は、蛍光タンパクを数個タンデムに融合する方式を採用し、これにより、シグナルノイズ比を十分に高めることができることを実証した。今後の研究においては、開発した技術を用いてmRNAの発現・輸送と同時にタンパク質の発現を捉えることにより、mRNA・タンパク質のノイズ量との関連性を解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は現在のところ順調に進捗しており、今後も申請時の研究計画の流れに沿って研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては機種選定を次年度に行った方が適切と判断される物品があったため、基金分の研究費を次年度に持ち越しとしている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、持ち越し分の研究費の使用と、研究計画に沿った予算の執行を適切に行っていく予定である。
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