研究課題/領域番号 |
26650056
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 元雅 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (40321781)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一分子 / 力学計測 / 蛋白質 |
研究実績の概要 |
タンパク質の構造は一つに固定されているわけではなく、様々な構造の集合体である。このようなタンパク質構造の揺らぎや不均一性は、タンパク質の凝集化や結合タンパク質との相互作用に大きな影響を及ぼす可能性が高いが、その詳細はいまだ不明である。光ピンセットを用いたタンパク質の一分子力学計測はタンパク質のコンフォメーション実空間を決定できる有効な手法であるが、タンパク質一分子を引っ張る際に二本鎖のDNAを取手として用いるため、そのDNAハンドルと非特異的に結合してしまう可能性のある核酸結合タンパク質には本手法は適用できない。そこで、ハンドルとしてポリエチレングリコール(PEG)鎖に着目し、二種類のPEGをSup35NMの両端に結合させた。それによって、二本鎖DNAを含まずに、PEGを介して一方にビーズと他方にビオチンを両端にもつSup35NM一分子-PEG複合体を調製し、そのSup35NMタンパク質に対して、光ピンセットを用いて一分子力学計測を行った。その結果、PEGに共有結合している方のビーズの形状が、光ピンセットによる効率的な捕捉およびそれによる一分子力学計測に重要であることが明らかになった。そこで、両端にPEGをもつSup35NMタンパク質一分子の構築のため、ビーズを既に共有結合しているPEGを用いる代わりに、PEGに結合させたジゴキシゲニンを介して、そのPEGと球状のビーズを結合させる手法を用い、PEG-Sup35NM-PEGの調製を行う必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEGを用いた一分子力学計測系の開発において、ビーズの捕捉効率がその形状に依存することなどを明らかにし、実験系をほぼ確立しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記の方法に加え、両端にシステインとNHSエステル・マレイミド、システインとビオチンをもつ二種類のPEGを用いてSup35NMタンパク質とカップリングを行う。それによって、両端がNHSエステル・マレイミドとビオチンであり、かつリンカーがPEGであるタンパク質の調製を確立させる。そのPEG-Sup35NM-PEG複合体に対して一分子力学計測実験を行い、コンフォメーション空間を決定して、リンカーとしてより柔軟性の高い二本鎖DNAの場合のコンフォメーション空間と比較、検討を行う。その後に、転写因子であり自閉症に関係しているMeCP2などのタンパク質の野生型と変異体に対して一分子力学計測実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリエチレングリコール(PEG)を用いた一分子力学計測系に構築において、ビーズとシステインを両端にもつPEG鎖を用いて実験を進めたところ、力学計測の段階になって、ビーズの形が完全に丸くなくいびつであり、ピペットでそのビーズを容易に捕捉できないことが判明した。そこで、ビーズの販売業者と連絡を取りつつ、ビーズの改良を目指した。これら一連のやり取りに時間がかかり、研究遂行に想定以上の時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、一分子力学計測のための試薬や消耗品に使用予定である。
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